日経サイエンス 

別冊209 犬と猫のサイエンス

別冊209 はじめに

日経サイエンス編集部

 テレビやネット動画にあふれる犬や猫の姿。かわいい表情やユーモラスなしぐさに目を奪われたことのある人は多いはずだ。動物好きの人や,ペットを飼っている人にとってはなおのこと,その魅力は語り尽くせない。なぜ人は動物と暮らすのか。
 
 犬や猫はどのようにして人に近しい存在になったのか。彼らの行動の意味を知り,その能力の秘密を解き明かし,ともに快適に暮らすための環境を考える──。本書にはそうしたさまざまなテーマが盛り込まれている。
 
 別冊日経サイエンス209「犬と猫のサイエンス」は,SCIENTIFIC AMERICANの別冊として今年発行された「e Science of Dogs & Cats」の訳書にあたる。
 
 Chapter1「ペットの心理学」では,主に犬の研究を通して,動物が人の精神状態に与える影響を探る。犬が人間とコミュニケーションをとる能力は格別に優れている。Chapter2「ようこそ犬の世界へ」では犬の高い能力に着目し,彼らの心と行
動を解明。米国の愛犬家たちに支持されたベストセラーの著者で,認知神経科学者のブライアン・ヘアによる犬をめぐるQ&Aも掲載されている。
 
 犬の祖先が群れで行動し,社会性を身につけたのに対し,猫の祖先は孤独を好み,明確なコミュニケーションのサインが少ない。なわばり意識が強く,研究室では観察しにくいため,猫の認知能力に関するデータは多くはない。Chapter3「猫の不思議」では,そんな彼らの謎だらけの世界を紹介する。行動学者ジョン・ブラッドショーによる人気ブログをもとに構成したQ&Aにもぜひ注目を。
 
 動物行動学の研究では擬人化は避けるべき落とし穴とされてきた。だが,野生動物や飼育環境にある動物の調査・研究を通してわかってきたのは,少なくとも彼らの一部には,他者への共感とそれを示す行動が見られるという事実だ。Chapter4「動物のこころ」では,こうした研究成果を通して感情や知性の本質に迫る。

 

2015年11月
日経サイエンス編集部

 
 
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