日経サイエンス  別冊日経サイエンス

別冊214 人類危機 未来への扉を求めて

別冊214 はじめに

日経サイエンス編集部

 別冊日経サイエンス214『人類危機 未来への扉を求めて』では,現代に生きる人々が直面する課題を扱う19編の記事を収載した。異常気象,エネルギー問題,環境破壊,食料生産,感染症など,多様なテーマを取り上げる。

Chapter1「気候変動危機」の冒頭では,北半球を襲う大寒波や熱波,干ばつ,洪水の原因として,北極を中心に大気上層を蛇行するジェット気流の異変に注目する(「異常気象を招く 暴れるジェット気流」)。「氷を壊し気候を揺さぶる北極海の大波」は,予想よりも速いペースで融け出している北極海の氷と,海氷にぶつかって氷を破砕する大波との相乗作用を解く。「カリフォルニアの大干ばつ」「大都市水害に立ち向かう」はそれぞれ米国の西海岸,東海岸での異常気象とその対策を取り上げた記事だが,同様の異変に襲われている地域はこれらにとどまらない。

Chapter2「環境問題とエネルギー」では,新たなエネルギーとして期待されるメタンハイドレートの環境への影響(「不都合な氷 メタンハイドレート」),米国でビジネスとして定着してきた太陽光発電の課題(「ソーラー・ウォーズ 太陽光発電 変わる構図」)を紹介。三大資源問題といわれるエネルギー・水・食料問題を包括的に解決していくための糸口を探る(「地球の最適解を探る)」。

境変化の速度が生態系の適応能力を上回ったとき,環境は崩壊に向かい,そのままでは回復が望めない。Chapter3「生態系の再生」は科学の手法で環境再生に取り組む最新事例を取り上げる(「森を動かせ 遺伝子流動アシスト」,「湿地修復に妙案」「死海は生き返るか?」)。

Chapter4「食の未来」では,食料増産への新しい取り組み(「組み換えなしで高速育種」「食物連鎖を生かす中国の巨大水産養殖」)と,政治や消費行動を含めた食の問題(「オリーブ危機 イタリアで広がる謎の病害」「温暖化が脅かすワインの味」)を考える。

世界で毎年3億9000万人が感染しながら対応策がなかったデング熱や,7割という高い致死率を示すエボラ出血熱(エボラウイルス病)は最も深刻な感染症だ。Chapter5「疾病を食い止める」では「デング熱ストッパー」「エボラ戦争」「温暖化で北極に広がる病気」3編を紹介する。

 

 

本書は月刊誌「日経サイエンス」に掲載された記事で編纂した。記事中の登場人物や著者の肩書きは特にことわりがない限り初出当時のものとした。

 

2016年8月
日経サイエンス編集部

 

別冊日経サイエンス214「人類危機 未来への扉を求めて」の目次へ