はじめに
イリュージョンへの誘い 北岡明佳
PROLOGUE
あなたがあなたである理由
人間は食べ物と配偶者を捜すロボット以上のものだ
CHAPTER 1 誤知覚の基礎
錯覚の神経科学
目がどのように欺かれるのかを知ると,脳の内部の働きが明らかになってくる
3D錯視の遠近法
斜塔に関連する錯視から,脳がどのように3次元イメージを作り上げてるかわかる
大小みなこれ幻
サイズは重要だろうか?脳にとっては,どうでもよい
パレイドリア 無意味に意味を見いだす幻
見えた通りに信じてしまうという落とし穴
ひとひねりが生む幻
知覚をゆがめる錯視の数々
影も形もなし
フェーディングの錯視は知覚のかくれんぼだ
ヨリックの幽霊 残像の神経科学
像を見つめると網膜の細胞が一時的にリセットされ,幽霊のような幻影を引き起こす場合がある
異次元の色
色は周囲に応じて代わり,境界の外まで広がっていく
パイロットを窮地に陥れる錯覚
軍用機のパイロットには自分の感覚を修正する力が求められる
影におびえて
薄気味悪い幻があなたの脳を翻弄する
痛みは錯覚
痛みは一種の感情だ
CHAPTER 2 見つめ合う幻
顔に何が見える?
人間の脳は顔の識別に非常に優れているが,その“顔感覚”をだます錯視も存在する
目は物語る
人間のような社会的霊長類にとって,目を見つめることは極めて重要だ
目にまつわる錯視が非常に強力なのはそのためかもしれない
愛の幻想
どのようにだまして進ぜようか? ハートと心を弄ぶ方法の数々をどうぞ
CHAPTER 3 アートと錯覚
オプ・アートに見る動きの幻
芸術と神経科学が結びつくと観悪的な「動きの幻」が生まれる
ありえない彫刻 立体作品の錯視
アーティストたちは不可視図形を
3次元の現実に変える不思議な技法を編み出した
本物よりも本物らしく
トロンプルイユは私たちの知覚をゆすぶる
まちなかの錯覚
街をカンバスに幻を描き出すストリートアートの数々
時を得た広告
時の経つのを忘れさせる広告の錯覚
おいしい錯視
これは顔か,それとも食べ物か?
脳は複数のレベルで食材アートワークを認識している
索引
S. マルティネス=コンデ/S. L. マクニック ともにアリゾナ州フェニックスにあるバロー神経学研究所の研究室長で,SCIENTIFIC AMERICAN MINDの編集顧問。ブレイクスリー(Sandra Blakeslee)との共著書『脳はすすんでだまされたがる』(邦訳は角川書店)がある。また,近く「Champions of Illusion」がScientific American/Farrar, Strauss and Girouxから出版予定。
北岡明佳(きたおか・あきよし) 立命館大学文学部心理学専攻教授。専門は知覚心理学。日本における錯視研究の第一人者として知られる。『視覚大解析 脳がだまされるサイエンス』(カンゼン),『錯視と錯覚の科学』(監修,ニュートンプレス),『だまされる視覚』(化学同人),『知覚心理学』(ミネルヴァ書房)など著書多数。2001年,日経サイエンスに「錯視のデザイン学」を連載した。2013年にはレディ・ガガのアルバムのCD盤面とトレイに錯視作品「ガンガゼ」が使われ,脚光を浴びた。