気分屋ジョーカーとの勝負(問題)
前々号では,スペードのエースがチェスクラブの入会試験を受けるという話にお付き合いいただいたが,今号は,無事に入会を果たしたエースが,クラブ会員のひとりであるジョーカーとの対戦で手を焼いているという話を紹介しよう。
ジョーカーはとても強いというわけではない。かといって,弱いわけでもなく,実に奇妙な実力というか性癖の持ち主なのだ。通常,勝率に影響するのは対戦相手と自分の実力の差だが,ジョーカーの場合,それまでの対戦成績が大きく影響する。ある日に同じ人と何戦かした場合,その日のそれまでの対戦結果を覚えていて,その成績が互角以上の場合やその日の初戦である場合は特に頑張ることもなく,むしろヘボプレーヤーと言ってよい。しかし,その日の成績が負け越している場合,どういうわけか妙に発奮するらしく,実力以上の強さを出すようなのだ。
実際,負け越している相手との対戦では,ジョーカーの勝率は相手が強いほど高いくらいで,同じ日に対戦が何度もあると,どの対戦相手とも互角に近い成績をおさめている。
気になったクラブマネージャーが,ある強豪会員とジョーカーとの対戦成績を長期間にわたって調べてみた。すると,同じ日の個々の対戦を見ると,その対戦までの同じ相手とのジョーカーの成績が互角以上の場合,ジョーカーは3割しか勝っていないのだが,負け越している場合,なんと7割の勝率を上げている。
さて,これがいつも正しいとしよう。つまり,ジョーカーがある相手と対戦する際,その相手とのその日の対戦成績が互角以上ならジョーカーの勝率はa(a<0.5)であるが,負け越している場合の勝率は反対にb=1−aとなるとしよう。なお,各対戦での引き分けはないものとする。
ある日,クラブは閑散としていて,スペードのエースとジョーカー以外にはあまり会員がいないことがあった。ほかに適当な相手がいないため,エースとジョーカーは2人で何度も対戦することになったが,ここで問題だ。
全部でn回の対戦をした結果,最終成績がタイにはならず,一方が過半数を制した場合,その過半数を制したのがエースである確率はどのくらいか読者にはわかるだろうか?
答えは2024年1月号に掲載
