パズルの国のアリス

ドローンを使った相互監視演習(問題)

坂井 公(神奈川大学非常勤講師) 題字・イラスト:斉藤重之

ハートの10人の兵士たちは,またもやクローケーグラウンドに出て,パトロール演習だ。ところが不思議の国にもだんだんハイテクの波が押し寄せているとみえて,今日はドローンを使った空からの遠隔監視演習だという。

新しもの好きの兵士たちは大喜びで,それぞれが自分に割り当てられたドローンをあれこれ操作して遊んでいる。

皆がやっと操作に慣れてきたと思った頃に,ハートの女王が視察と称して演習場にやってきた。目新しいものに目がない女王,もちろん視察というのは口実で,ドローンがどういうものか見に来たに違いない。

案の定,エースが操作する円形のモニター画面を興味深そうにのぞき込み,「フーム,なかなか面白いものじゃな」と感心したふうに言う。さらに,「この画面にはほかの9台のドローンが皆映っているが,カメラの視野の広さはどのくらいじゃ?」と聞く。

指揮官のジャックが答える。「はっ,陛下,360度と申し上げたいところでございますが,魚眼レンズではありませんし,画像としてモニターに映すという事情もありまして,映る範囲は180度に制限しております」。
「ふむ。すると1台のドローンに着目して,それを視野の真ん中に収めようとすると,映らないドローンというのが出てくることがあるのう」
「はい,例えばカメラから見たときの2台のドローンの角度が90度より大きい場合は, 1台の像をモニター中央に収めようとしますと,もう1台はモニター画面からはみ出してしまいます」

それを聞いたハートの女王,また厄介な気まぐれを思いついた。

「では,10台のドローンをこういうふうに配置することは可能か? 各ドローンのカメラのモニター画面は,別のどれか1台のドローンをモニター中央に収めるとする。どれがどれを中央に収めた場合であっても,他の8台のドローンの像がどれも画面からはみ出すことのないようドローンを配置し,そういう配置を保った上で相互監視パトロールの演習をしてみよ」

ハートの女王の気まぐれは絶対である。そういう演習にどういう意味があるかを問うても益はない。下手に反対すると「首を刎ねよ!」とやられるのがおちだ。

読者にはハートのジャックや兵士たちを助けてやって頂きたい。それには,女王が要求するような10台のドローンのうまい配置を見つけて,監視訓練を行うか,どう工夫しようともそのような配置は存在しないことを証明して女王を説得するかしかないだろう。

まず,ウォーミングアップとして,ドローンが8台ならば,女王の言うような配置を作って相互監視が可能だから,そのような配置を見つけて頂きたい。それには,あるドローンから他の7台のうちの2台を見たときの角度がどれも90度を超えることがないようにすることが必要だ。

ドローンの台数が増えていくと,そのような配置を見つけるのは急速に難しくなる。9台,10台でもそのような配置は可能だろうか。可能ならばその配置を示し,不可能ならばそのことを証明して頂きたい。

答えは2023年10月号にて

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