パズルの国のアリス

最長のスタンプラリー・ルートを探せ!(問題)

坂井 公(神奈川大学非常勤講師) 題字・イラスト:斉藤重之

近隣の住人にしかあまり知られていないが,鏡の国にも温泉がある。東ナイト駅の北に建設中の新しい鏡の国博物館から,さらに北へずっと入っていく山道があり,そのドン詰まりが温泉なのだ。結構湯量が豊富で湯温も高いアルカリ温泉である。

もっと観光資源として利用しようという声がチェス王室の中で高まり,有識者を集めた諮問委員会で振興策を検討することになった。委員の一人として招かれたハンプティダンプティが言う。「温泉に至る途中の山道も風光明媚だから,それを活用しない手はありませんな。……うーむ,まず山道の入り口には建設中の博物館があり,途中には物言う花々が咲き誇る公園もあります。あの花たちはちょっとやかましい気もしますけど,他にも観光ポイントになるものがいくつかあるので,最近のはやりに便乗して,それらを巡る景品付きのスタンプラリーというのはどうですかな」。

調べてみると,博物館,公園,温泉を含めてスタンプを預けておけそうな事務所がある観光ポイントが全部で8カ所見つかった。

ところが,王室代表の白の騎士が難点を指摘した。「スタンプラリーで仮に全ポイントを巡るとして,博物館を皮切りにあとは,順に北へ北へポイントを辿っていけば,最後に温泉に着いた時には自然にスタンプが集まっているということになります。もっと面白みのあるような企画はないですかね」。

「うーむ」と全委員が考え込んだが,やがて,大工が次のように提案した。「山道自体は,それほど勾配がきついわけでもなく,途中の風景も美しいので散歩にはうってつけですな。最近は健康志向を心掛ける人も多いから,長く散歩を楽しんでもらうという意味でこうしたらどうでしょう。ラリー参加者はスタンプ台帳に各観光ポイントのスタンプを押してもらうわけですが,8種のスタンプは必ず左詰めで順に押していく。そうすれば,どの順にどのポイントを巡ったかの記録が残りますね。すると,参加者がスタンプラリーを通して歩いた距離の合計がわかりますから,その距離に応じて景品に差をつけるというのは,いかがですか」。

委員会はおおむねその案でまとまり,長く歩いた人には短い人よりよい景品を出すことになった。

ここで今月号の問題だ。観光ポイントは8つあるので,南から北へAからHまでの記号を振ることにしよう。最短のスタンプラリー・ルートは明らかで,Aの博物館から始めて,B, C,……とHの温泉まで順にスタンプを集めていくことだ。では,最長はどうなるだろうか? なお,隣接する観光ポイント間の距離は南から順に,0.4,0.3,0.6,0.5,0.9,0.5,0.6で, 単位はすべてkmとする。

最短のコース長は,考えるまでもなく0.4+0.3+0.6+0.5+0.9+0.5+0.6=3.8kmだが,ポイントを巡る順番を変えることでこれをどこまで伸ばせるだろうか? もちろんAからBとCをとばして先にDへ行く場合でも,特別な近道などは存在しないから,0.4+0.3+0.6=1.3km 歩くことになる。

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