天邪鬼の意地悪にめげるな(問題)
不思議の国や鏡の国に現れる妙な妖怪については前にも書いたことがある(2021年2月号,2021年12月号)。妖怪には「アマビエ」のようによいことをするものもいれば,その妖力をケチなことに使う「千里眼見習い」などもいる。今月号は,誰にも歓迎されないどころか自分にとっても何の得にもならない意地悪にばかり精力を費やしている妖怪「天邪鬼(アマノジャク)」にまつわる話だ。
鏡の国には零細ではあるが地道な仕事ぶりの養蜂家がいる。大きな商売をしているわけではなく,ミツバチたちにとって余剰となった分の蜂蜜をコツコツと集めて売っているだけなので,花やミツバチたちも協力的で,あまりもうかりはしないが仕事は順調だった。
ところが,それが気に入らないとでもいうのか,天邪鬼はこの養蜂家に意地悪を仕掛けるようになった。養蜂家は2リットルの蜂蜜を入れることができる容器を8個持っている。今の時期,1日に収穫できる蜂蜜の量はミツバチや花の協力があってもきっかり1リットルだけだから,2日で1つの容器が満杯になる計算だ。養蜂家は2リットル容器単位で蜂蜜を市場に持っていって売ることにしている。
天邪鬼が始めた意地悪とは,蜂蜜が半ばまでたまった容器の中に雑菌を入れることだ。そうなると蜂蜜は濁って色が悪くなるうえ,酸っぱくなってしまい,売り物にならない。
それで養蜂家がイモムシ探偵局に相談に来た。「天邪鬼が1日に雑菌を入れることができるのは,複数個ある容器のうちの1つだけだ。そこで,蜂蜜を収穫する際にいくつかの容器に分割して入れることで1日の悪さで被害にあう量を減らし,何日か後には何とか1容器だけでも出荷できるようにならないだろうか?」というのが,相談の内容だ。幸い天邪鬼は飽きっぽい性格なので,自分の意地悪をかいくぐって1容器でも出荷されてしまうと,意地悪を続ける気力を失うだろう。
そこで,まずはウォーミングアップ問題として,読者にはイモムシ探偵局の助手グリフォンやアリスに協力して,この養蜂家に適切なアドバイスをしてほしい。一応断っておくが,1日に収穫できる蜂蜜はちょうど1リットルであり,養蜂家はそれらをすべてどれかの容器に入れて保存しなければならない。また,蜂蜜は一度容器に入れられてしまうと,そこから別の容器に移し替えることはできず,たとえ複数の容器に合計で2リットル分の蜂蜜が保存されていたとしても,それらを別の容器に移し替えて1つの容器を満杯にすることはできない。雑菌を入れられた容器の中の蜂蜜は廃棄するしかないが,中身を出してよく洗浄すれば,容器自体は何度でも再利用できる。
さらに,これが本題だが,もし天邪鬼が1日に2つずつの容器に雑菌を入れ,中身をダメにすることができたとしたらどうだろう? 養蜂家にはそれでも何とか容器1つを満杯にして出荷する方法があるだろうか? できるならその方法を考えていただきたい。不可能ならそのことを証明してほしい。
答えは2023年2月号に掲載
