パズルの国のアリス

チェス大会予選リーグ(問題)

坂井 公(筑波大学アソシエイト) 題字・イラスト:斉藤重之

 アリスがイモムシ探偵局で大きな表を前にして何やら作業をしている。「何だか忙しそうだね。でも,楽しそうにも見える」と探偵助手のグリフォンが声をかけると,アリスは「鏡の国のチェス王室がまたチェス大会を開催しようと企画しているのよ」と言う。

 続けて「大会はチェス王室の主催だけど,主催者だからといって代表枠が他の国よりも多いわけではなく,代表選手は1人。前回はトーナメントで代表を決めたんだけど(2021年6月号,または単行本『数学でピザを切り分ける! パズルの国のアリス4』第145話を参照),たった1度でも負けたらおしまいというのは評判が悪くて……。今回は各選手総当たりのリーグ戦で代表を決めることになって,あたしはその勝敗表の管理を任されているの」。

 「ははあ,その大きな表が勝敗表というわけだね。確かに結果が楽しみではあるが……」

 「ええ,すごいのよ。チェス王室の全員,つまり赤の16人と白の16人の合計32人が,引き分けは認めず何度も再試合して決着がつくまで,互いに1回ずつ戦うんだけど,本当にみんな甲乙つけがたいというか,実力が伯仲していて誰が代表になってもおかしくないの。いまは全員が3試合を残していて,一番成績の良いのは赤のポーンの1人で,16勝12敗。でも,一番成績の悪い人でも13勝15敗で,代表になるチャンスがまだ全員に残っているわ」

 「それだと,すべての試合が終わっても,おそらく同率首位の人が何人かいて,プレーオフというか代表決定戦で決めることになるんだろうけど,誰が代表になっても,『俺はあいつには勝ったんだけど……』というような不満を持つ人が出てくるね」

 「本当にそうね。勝敗表を見ていても,対戦が終わった3人で互いに三すくみ状態になっている組が何組もあるわ。このなかの誰かが代表になると,その人に勝った人はちょっと不満に思うわね」

 「まあ,仕方ないことさ。ところで,リーグ戦が終わった時点で,そういう3人が1組も生じないことがありうるんだけど,それってどういう場合かわかるかい?」

 「簡単よ。強さに完全な順位がついていて,順位が上位の人が下位の人に決して負けていない場合でしょう? その場合,31勝0敗から0勝31敗まで1人ずついて,1位の人が代表になることに文句のつけようがないわね」

 「じゃあ,逆に三すくみの組数が最大になるのはどういう場合かな? それと,その場合に三すくみの組数はいくつになるかわかるかい?」

 「きっと全員の勝率がほぼ5割の場合だわ。今回の32人のリーグ戦では,16勝15敗と15勝16敗の人ばかりのときだと思うけど。そのときの三すくみの組数はというと,えーと……」

 今月号の問題はこのアリスの予想が正しいかどうかを判定してもらうことだ。また,三すくみの組数が最大の場合,その組数がいくつになるかわかるだろうか?

 念のため述べておくと,三すくみとは例えばAがBに勝ち,BがCに勝ち,CがAに勝ったという状況になっている3人の組A,B,Cのことである。



答えは2022年8月号に掲載

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