パズルの国のアリス

子蜘蛛のジャンプ練習

坂井 公(筑波大学アソシエイト) 題字・イラスト:斉藤重之

 2020年5月号でヤマネの7匹の姪たちが飼っているペットの蜘蛛の話をしたが,早いものでそのペットたちも代替わりをしているという。アリスはその様子を見に訪ねてみた。

 サンデイが出迎えた。「生まれて間もない子がいて,ちょうど庭でジャンプの練習中なのよ。その子のおじいちゃんとおばあちゃんが総出で練習につき合っているわ」と言う。アリスの怪訝そうな顔を見て,「いや,その子の親だって,別にネグレクトしているわけではないのよ。どこかで網を張って食料調達に忙しいの。あたしたちだって,ペットに十分に餌を与えているんだけど,やっぱり生餌のほうがおいしいのかしら」と続ける。

 アリスがサンデイとともに庭に出てみると,確かに5匹の蜘蛛が庭に散っていて,その周囲でサンデイの姉妹たち6匹がやんやの喝采を送っている。なかにいかにも生まれてあまり日がたっていないと思われるとても小さい蜘蛛がいて,それを4匹の年寄り蜘蛛が遠巻きにしている。その4匹はちょうど正方形の四隅の位置を占めていて,それぞれが子蜘蛛と細い1本の糸でつながっている。

 アリスが見ていると,子蜘蛛がぎごちない動きながらも一生懸命に跳び上がった。すると,周囲の4匹のうちの1匹が強く糸を引き,子蜘蛛を自分のほうに引き寄せた。前述の号で述べたように,ジャンプしたのが大人の蜘蛛であれば,引き寄せた蜘蛛を跳び越え,反対側に着地するのが普通だが,この子蜘蛛の場合は,ジャンプ力が十分ではなく,引いた祖父母の位置を越えることなくその手前の地点に着地した。

 マンデイが,祖父母たちが形成する正方形内の一点を指さしてアリスに言う。「ほら,あそこに小さい虫がいるでしょ。動かないけど死んでいるわけではなくて,麻痺しているだけなのよ。それに届く位置に子蜘蛛がうまく跳んでいければ,おやつとしてあの虫にありつけるという趣向らしいのよ。でも見ていると,あの子蜘蛛はいつでも自分が跳ぶ前にいた位置と糸を引いてくれた祖父母の位置のちょうど中点に着地するようなの。目標地点が中点にくるように祖父母が位置を変えれば簡単なんだけど,この分ではいつおやつにありつけることやら……」。

 さて,このあたりで読者の知恵を拝借することにしよう。祖父母たちは正方形の四隅から決して動くことなく,子蜘蛛がジャンプのみを繰り返すことで,正方形内の任意の地点に好きなだけ近づきうることを証明してほしい。またその目的を達するための系統的な手段があればそれを明示していただきたい。ジャンプの前後での子蜘蛛の位置を数学的にきちんと述べるなら,ジャンプ前の子蜘蛛の位置をPとし,糸を引いた蜘蛛の位置をAとすると,ジャンプ後の子蜘蛛の位置は線分APの中点になる。

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