電子コイン投げ機(解答)
実は,電子コイン投げ4回で勝者を決める方法が存在する。
その手段だが,まず,コイン投げをn回行って起こりうる結果は2n通りあることに注意しておこう。細かく分類すると,n回のうち,「表」がk回,「裏」がn−k回になるパターンはnCk通りある。各回とも「表」が出る確率は一定で変えられないということだから,それをpとすると,「表」がk回,「裏」がn−k回のどのパターンもそれが起こる確率はpk(1−p)n−kである。ゆえに,それぞれのパターンをヤマネ,三月ウサギ,帽子屋に振り分けて起こる確率の合計が3人とも1/3になるようにすればよい。
n=4のときは,k=0とk=4の場合(すなわち全部が「裏」と全部が「表」の場合)を除きnCkが偶数であることに気づけば,比較的,簡単にこの振り分けが可能である。要は,全部が「裏」と全部が「表」の場合をヤマネに割り当ててその確率の合計を1/3にすることができれば,残りのパターンを三月ウサギと帽子屋に均等に分割すればよい。実際,これは可能だ。4回すべてが「表」または「裏」の確率は,p=1/2+q(−1/2≦q≦1/2)とおけば
(1−p)4+p4=(1/2−q)4+(1/2+q)4=2q4+3q2+1/8
であるが,これが1/3になるには
であればよい。よって,「表」が出る確率をp=1/2+q(およそ0.75787か0.24213)に設定して4回のコイン投げを行い,「表表表表」または「裏裏裏裏」と出ればヤマネの勝ちとする。それ以外の場合は,同じ回数の「表裏」の組み合わせを均等に三月ウサギと帽子屋に振り分ける。例えば,表が1回のパターンなら,「表裏裏裏」「裏表裏裏」は三月ウサギの勝ち,「裏裏表裏」「裏裏裏表」は帽子屋の勝ちとする。表と裏が2回ずつのパターンなら,「表裏裏表」「表裏表裏」「表表裏裏」を三月ウサギの勝ち,「裏表表裏」「裏表裏表」「裏裏表表」を帽子屋の勝ちとする。表が3回のパターンなら,「表表表裏」「表表裏表」を三月ウサギの勝ちとし,「表裏表表」「裏表表表」を帽子屋の勝ちとする。このように定めることで3人の勝率をすべて1/3にすることができる。
もっとバランスの取れた解がお好みなら,「表表表表」と「裏裏裏裏」に加え「表表裏裏」と「裏裏表表」〔どちらも確率p2(1−p)2〕をヤマネの勝ちとし,それ以外を三月ウサギと帽子屋で均等に分けることもできる。その場合,上と同様の方程式を立てて解けば,「表」の確率を
に設定すればよいことがわかる。
3回以下のコイン投げで同じ目的を確実に達成する方法があるかどうかを筆者は知らないが,おそらく不可能と思う。逆に5回のコイン投げでなら,同じ目的を達成するのにもっといろいろな方法がありそうだが,いずれにせよ上の手段よりはだいぶ複雑で面倒なことになりそうだ。このあたり,他にどんな手段があるかや,その長短の検討は読者にお任せしよう。