パズルの国のアリス

少しそそっかしい“アマビエ”(問題)

坂井 公(筑波大学アソシエイト) 題字・イラスト:斉藤重之

 本稿が誌面に出るのは2020年の暮れになると思うが,本年は世界中がCOVID-19にすっかり振り回されてしまった。

 我々の世界に限らず,2011年7月号の「スペード兵士間のインフルエンザ感染」(『パズルの国のアリス』に収載)で触れたように,不思議の国も鏡の国も疫病に無縁ではない。むしろこれらの国のインフルエンザウイルスは感染力がむちゃくちゃ強く,感染者と鉢合わせすると瞬時にうつってしまうほどだが,大きな流行に至らないのは,ウイルスの構造が簡単でワクチンを作りやすいからだ。わずか2つの正の整数mnmn)だけでウイルスの型は特定され,(mn)型のワクチンがあれば,その型のウイルスによる流行は抑えられる。しかも,これらの国にも「アマビエ」のような神様(あるいは妖怪?)がいて,ウイルスの型がわかればたちまちワクチンを作って普及させてくれるのだ。

 ある日,スペードのエースが喉に少し違和感を感じ,診察してもらおうと「不思議の国病院」を訪ねると,妙に院内に落ち着きがない。近くにいるスタッフに尋ねると,この冬はあちこちで疫病が同時流行していて,ワクチンの神様も大忙しということだ。とても不思議の国ばかりにかかずらっていられないので,ワクチンの神様は医療関係者に奇妙な機械を提供して,自力でなんとかするよう促したという。

 神様いわく「ここにインフルエンザワクチン合成マシンがある。このマシンができることは,次の4つだ。

 

(A)サンプルワクチンを複製したり,サンプルと同じワクチンを量産する。
(B)(mn)型サンプルワクチンから(m+1,n+1)型サンプルを作る。例えば(3,17)型から(4,18)型を作る。
(C)mnが偶数の場合に(mn)型サンプルワクチンから(m/2,n/2)型サンプルを作る。例えば(6,34)型から(3,17)型を作る。
(D)2つのサンプルワクチンの型に共通の数値がある場合,その共通の数値を除いた数値を型に持つサンプルを作る。例えば(3,17)型と(17,25)型から(3,25)型を作る。

 

このマシンとともにサンプルワクチンを1つおいていくので,もしインフルエンザ感染者が出たら,その型を速やかに調べ,適合するワクチンをこのマシンで合成・量産し,万全の態勢で予防にあたってほしい」。

 これだけを指示して,ワクチンの神様はそそくさと感染がもっと深刻な別の国へ旅立ったらしいのだが,ややそそっかしい神様で,医療関係者は困ってしまった。というのは,ウイルスの型を特定することは自分たちでできるが,神様がマニュアルをおいていってくれなかったので,ウイルス型に適合するワクチンをサンプルから合成する手順がよくわからないからだ。

 そこで,スペードのエースだけでなく,読者にも助けをお願いしたい。まず,ウォーミングアップとして,仮に神様がおいていったサンプルワクチンが(3,17)型だったとしよう。このサンプルから(10,31)型を作るにはどうすればよいか考えていただこう。この問題は,いろいろ試してみればなんとかなりそうだが,あまり簡単ではないかもしれない。

 次の問題として,神様がおいていったサンプルワクチンがどんな型であろうと任意のmについて(mm)型ワクチンを作ることができるので,それを証明してほしい。

 そもそも神様がおいていったマシンとサンプルワクチンは完全なのだろうか。つまり,任意のmnmn)について(mn)型ワクチンを作ることができるかを最後に検討していただきたい。おいていったサンプルが(ab)型だった場合,どのような型なら合成でき,どのような型は合成不可能なのか,abとの関係で述べることができるだろうか?

答えは1月15日に

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