サイコロで地雷原を進む(問題)
読者もご存じのように,「首をはねよ!」はハートの女王の口癖だ。この日も死刑囚の監房では,打ち首を宣告されたトランプ兵士たちが雑談に花を咲かせながら,翌朝に釈放されるのをのんきに待っている。
ところが,その声高な雑談が監房の外をたまたま通りかかった女王に聞こえてしまい,話がややこしくなった。囚人たちのあまりの緊張感のなさにカンカンになった女王は,「即日,死刑執行だ」と騒ぎ出す。
このようなことはよくあり,その場合に女王をなだめるのがハートの王の役目だ。そうしないと女王の機嫌はますます悪くなる。「まあ,まあ,そちの怒りはよくわかる。しかし,こういうときには相手にも逃げ道を残しておいてやるのが王者たる者のたしなみで,そうでないと風格に欠ける」。
王はゲーム好きなことも手伝って,次のような方法を提案した。「サイコロを振って100マスからなる廊下を歩かせるというのはどうじゃ? いくつかのマスには地雷が仕掛けてあって,踏んだら一巻の終わりだ。もちろん勝手に歩くのではなく,サイコロの出目のとおりに進む。1が出れば1マス,6が出れば6マス進むといった具合にな。このようにサイコロを振りながら進んで100マスの廊下を無事通過できれば,釈放じゃ。どうかの?」
賭博好きの女王はこの提案にすぐ乗ってきたが,「では,1つおきくらいのマスに地雷を置いて」と乱暴なことを言う。「おいおい,それでは命がいくつあっても足りないよ」と王。「囚人たちにお灸を据えるのが目的なんだから,地雷マスは2つもあれば十分じゃ」
女王は少し不満そうだったが,兵士がいなくなってしまっては実際問題として困る。というわけで,「よろしいでしょう。代わりに100マスのうちどの2マスに地雷を設置するかは,こちらで決めさせていただきます」と言って,トランプ城の雑用係のジョーカーを呼びつけ,地雷の設置場所を決めるように命じた。
ジョーカーは女王の意図をくみ,ついでに日ごろ兵士たちから雑用係としてバカにされている鬱憤を晴らそうと,間違いなく囚人が踏む確率が最大になるように2つの地雷を置くはずだ。そこで,読者への問題は,ジョーカーがどこに地雷を置くかを推測してもらうことと,その場合に囚人が地雷を踏む確率を計算してもらうことだ。
また,王がさらに温情をかけ,2つの地雷のうち1つの位置はジョーカーが決めるが,もう1つの位置は囚人自身が決められることになったら,2つの地雷はどこに置かれ,その場合に地雷を踏む確率はどうなるだろうか?
ところで,読者の心の平穏のために書き添えておくが,実際にマスに地雷を仕掛けるつもりなどハートの王には毛頭ない。囚人が“地雷”マスを踏んだら大きな爆発音が鳴るぐらいにとどめるつもりだ。女王もその程度で満足してくれよう。
答えは,2020年11月号に掲載
