パズルの国のアリス

ポーンたちの背比べ(問題)

坂井 公(筑波大学アソシエイト) 題字・イラスト:斉藤重之

 先月号では赤のポーンたちが賭け事なしで集まった初めての晩餐会の話をしたが,その続きの話にもう少しお付き合い願おう。

 晩餐会はプレゼント交換も記念写真撮影も何とか無事に済み,そろそろお開きにしようかということになったとき,突然,会場に白のポーンたちが大挙してなだれ込んできた。

 「あれあれ,おい,噂どおりだぞ」と先頭を切って入ってきたポーンが後続の仲間に叫ぶ。「こっそり赤の連中だけでうまいことやりやがって」。「うまいことって……俺たちは,赤の女王様が『まずはお前たちだけで』っておっしゃるから……」と赤のポーンが反論すると,「だから,それがけしからんって言うんだ。そもそも俺たち白のポーンのことが最初から念頭にないってのがおかしい。同じチェス王室を守る者としてそんな話があるか?」と,もし逆の立場なら赤のポーンのことなど思い出しもしないのに,白のポーンはここぞとばかり言い募る。

 こうしてともかく,晩餐会は乱入者を迎え,王侯たちこそいないもののポーン全員による大宴会に発展した。

 居合わせていたアリスは未成年のためジュースでお付き合いだが,にぎやかな宴会は嫌いではない。互いによく似た16人が輪になってワイワイとやっているのを見て楽しんでいたが,彼らの身長が少しずつ異なるという事実を思い出した(2018年3月号の「平等な綱引き」)。「確か背の順に並ぶと身長が等差数列をなすということだったけど,本当かしら?」

 そこで「ねえ,ねえ,みなさんの身長って本当に等差数列になるの? そのままの位置でいいから,隣どうしで比べあってみてくださらない?」 アルコールも入って陽気になっていたポーンたちは「お安い御用さ」と隣どうしで背比べをし,その差をぐるりと書いた紙をアリスに渡した。それを見たアリスは「あら,本当,みな特定の値の整数倍だわ」と驚いて眺めていたが,ふと何を思ったか,その隣に新たに数値を書き始めた。

 しばらくして顔を上げ,「驚いたわ。16個の数値が輪の形に並んでいたから,それぞれ隣どうしの差を求めてその数値をまた輪の形に書いたのよ。それを何度もやっていたらしまいには全部が0になってしまったわ。これって偶然? それともいつでもこうなるのかしら? 誰かご存じない?」

 読者には,このアリスの疑問に答えていただきたい。これは偶然だろうか? もし偶然だとしたら,ポーンたちがどのように並んでいればこのようなことが起こるのだろうか? もし必然的にそういうことが起こるのだとしたら,それを証明していただきたい。


答えは,2020年10月号に掲載

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