外れるとヒントがもらえる賭け(問題)
ある日,帽子屋が恒例のお茶会会場である三月ウサギの家の前にブラブラとやって来ると,驚いたことに珍客がいた。例のマハラジャ出身と噂されるお大尽だ。
自分に得にならない賭けを持ちかけては金品をばらまくのがお大尽の趣味であることは,いまや不思議の国では誰一人として知らぬものはいない事実だ。どうやら,先に来ていたヤマネを相手に新しい賭けの実演と検証をしているようで,ルーレットやらサイコロやらがテーブル上に転がっている。ルーレットは1から36までの目が均等に出るというタイプのもので,0や00の目はない。
お大尽がヤマネに言う。「わしがこのルーレットを君に見えないように回す。出た目が何かを君が当てれば,その目と同じ枚数の銀貨を君にあげよう。さて,どの目に賭ける?」
さすがにヤマネも次のように考えた。「ええっと,目が出る可能性は1も36も同じだよね。すると1を選ぶよりも36を選んだほうが当たったときに得だよな」。
そこでヤマネが「36がいいな」と答えると,お大尽は満足そうに「そうだろう,そうだろう」とうなずいて,「当てるチャンスが1回だけだと外れた場合に気の毒だから,あと2回チャンスをあげよう」と続ける。「さらに,実際に出た目がその外れた数値よりも大きいか小さいかを毎回ヒントとして教えてあげることにしよう。君は出た目を3回以内に当てれば,その目と同じ枚数の銀貨がもらえるということだ。さあ,今度は最初にどの目に賭ける?」
今度はヤマネもキョトンとして「当たると得になる36,35,34という順に賭ければいいのだろうか」などと考えるが,よくわからない。助けを求めるように帽子屋を見るが,帽子屋もすぐには答えが出せない。三月ウサギも家から出てきて仲間に加わり,考え始めた。
このあたりで読者にも参加していただこう。お大尽が提案しているような賭けの場合にヤマネはどのような戦略をとればよいかについて,3人組にアドバイスをいただきたい。
実は,お大尽は自分が支払わねばならない銀貨枚数の期待値を知りたがっている。読者にはヤマネが最適戦略をとった場合に銀貨枚数の期待値がいくつになるかも考えていただこう。
また,ルーレットを回すのではなく,2個のサイコロを振り,出た目の和を当てるという賭けならばどうだろう。ルーレットの場合と同様に,ヤマネがとるべき戦略と,そのときにお大尽が支払う銀貨枚数の期待値を考えていただきたい。さらに,2つのサイコロの目の積を当てる場合はどうだろうか?
どちらも,報酬は当てた数値と同じ枚数の銀貨であり,ヒントをもらいながら3回以内に当てるという条件も同じとする。
答えは,2020年8月号に掲載
