パズルの国のアリス

モグラ国芸能団と白の騎士のコラボ

 モグラ国芸能団の団長が鏡の国の白の騎士のところに相談に来た。以前に紹介したように(2017年12月号),モグラ国芸能団は地面の上に顔を出したり引っ込めたりを瞬時にやる芸を使ったショーを売りにしている。しかし,いつもまったく同じショーというのも,それこそ芸がないので,少し変えてみたいというのが団長の意向だ。

 以前のショーの「モグラ叩き」は次のようなものだった。最初,団員のモグラたちはマス目に仕切られた広場の一部に,長方形の形に隙間なく並んで顔を出している。叩き手は連続する3つのマス目で,真ん中と片端のマス目にモグラがそれぞれ顔を出していてもう片端が空いているところを見つけ,その2匹を目がけて2連ハンマーを振り下ろす。すると,2匹は地中にもぐりこみ,3つ目の空マス目に別のモグラが顔をのぞかせる。これを高速で繰り返し,団長のモグラ1匹だけを残す。

 団長はこのモグラ叩きを次のように変えたいと考えている。団員が顔を出しうるマス目が長方形の形に並んでいる(以下「モグラ叩き領域」)。ハンマーは下図のようにヘッドの形が異なる4種類あり(ヘッドを構成する各正方形はマス目と同じ大きさ),叩き手にはそのうちの1つのみが与えられる。

ハンマーで叩く箇所はヘッド全体がモグラ叩き領域内に収まればどこでもかまわない。以前と同様,ハンマーヘッドが振り下ろされたマス目に顔を出していたモグラは叩かれる前に素早く地面の下に隠れる。だが,ヘッドが空マス目を叩いた場合,ヘッドが上がるや否や叩かれた空マス目すべてにモグラが顔をのぞかせる。これを繰り返して,最終的にすべてのモグラが地面の下に隠れた状態にする。

 だが,何回か練習したところ,最初に顔を出しているモグラの配置によってはこの目標を達成できない場合があることがわかった。どのような配置ならば目標を達成できるか団長にはよくわからない。

 団長が悩んでいると,チェス王室の赤のポーンの1人が,自分たちのために白の騎士が作ってくれた色模様反転装置(下記のイラストの右,詳細は2014年78月号を参照)との類似に気がついて白の騎士に相談するよう勧めてくれた(そういうわけで団長は白の騎士のところに相談に来た)。確かにモグラが顔を出しているマスを赤マス,空マスを白マスと考えれば,ハンマーを振り下ろす行為は色模様反転装置を使うことと変わらない。違うのは,ハンマー(装置)の形と,複数のハンマー(装置)を組み合わせて使うことはないことだ。

 この辺で,読者にも参加していただこう。まず,ウォーミングアップとして,モグラ叩き領域が4×4のマス目で,最初にモグラが下図のそれぞれのように顔を出しているとき,ハンマーで叩くことによって全員が地面の下に隠れた状態にすることができるかを,ヘッドの形がそれぞれの場合について考えてほしい。なお,下図で「も」が書いてあるマス目が,モグラが顔を出しているマス目であり,空白のマス目は空マス目を示す。また,どのハンマーも方向を変えて使うことができる。

 もちろん,4つの初期配置の中には与えられたハンマーでは全員を地中に隠すことができないものがある。そのような配置の中に,1~2個のマス目の初期状態を変えることで目標を達成できるものはあるだろうか?

 さらに,モグラ叩き領域が4×4のマス目ではなく一般の長方形の場合に,各ハンマーで目標を達成するには初期配置がどうなっていればよいか,その必要十分条件を考えていただきたい。


答えは,2020年1月号に掲載

再録『パズルの国のアリス4 数学でピザを切り分ける!』

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