パズルの国のアリス

ハリネズミが描く三角形(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 お茶会3人組は,白の騎士が試作しハートの女王から試験使用を頼まれているハリネズミロボット(2019年3月号6月号)が妙に気に入ってしまったらしく,お茶会をそこそこに今日も操作テストだ。今回は,3台を同時に操作しながら,方向と距離の微妙な調整の練習である。いつものメンバーにチェシャ猫とグリフォンが加わり,動かし方や操作結果の判定にああだこうだと議論百出だ。

 グリフォンが指示を出す。「まず,正三角形の頂点の位置に3人がそれぞれ立ち,自分の足元に置いたハリネズミを相手の足元に転がし,ピタリと止める練習だ。ヤマネは帽子屋,帽子屋は三月ウサギ,三月ウサギはヤマネを狙ってな。よし,やってみよう」。

 3台のハリネズミがコロコロと転がって目標位置で見事に止まると,グリフォンは「おお,ブラボー。すごいじゃないか」と言って,ドヤ顔をしている帽子屋をちらっと見た後,さらに指示を出す。「今度はもっと難しいぞ。各ハリネズミを今の位置から,もう1人のほうへ向けて動かし,正三角形の各辺の中点で止めてみよう。つまり,自分と自分のハリネズミを結ぶ線分が正三角形を2等分するような位置で各自のハリネズミを止めればよい」。

 3人組がその課題もうまくクリアすると,「では,こういうのはどうだ。ハリネズミをさらに少しずつ動かし,それぞれが自分と自分のハリネズミを結ぶ線分を描いてみる。これら3本の線分に囲まれる三角形が,元の正三角形の半分の面積を持つ正三角形になるようにするというのは?」

 さすがに,この課題には3人組もキョトンである。図を使って課題を厳密に述べると,次のようになる。下図のA,B,Cをヤマネ,帽子屋,三月ウサギの位置とする。また,D,E,Fをそれぞれのハリネズミの位置とする。このときAD,BE,CFの囲む三角形,すなわち下図では△RSTが△ABCの半分の面積を持つ正三角形になるようにそれぞれのハリネズミを動かせというのがグリフォンの出した課題だ。読者には,この課題をクリアするために3人組に知恵を貸していただきたい。

 △ABCと△RSTが正三角形だから,対称性によりAF=BD=CEになることはすぐわかるが,例えばBCを1とするとき,課題をクリアするにはBDをいくつにすればよいだろうか? 実はこの値は簡単な分数にはならないのだが,どのように考えれば求まるだろうか?

 そのためのウォーミングアップとしては,次のような問題を考えてみるのが有用かもしれない。上図でAF:FB=BD:DC=CE:EA=x:1とするとき,BR:RE,CR:RFはどうなるだろうか?




答えは,『パズルの国のアリス4 数学でピザを切り分ける!』をご覧ください

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