パズルの国のアリス

続・勝負の決着を 早めるには(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 今月は,先月号の問題の変形についていくつか考えていただこう。

 アリスは,探偵局を訪問したときに,話の種として,トウィードルダムとトウィードルディーの双子兄弟がやっていた先月号のコイントス勝負のことを,イモムシやグリフォンに語った。

 コイン投げでカードのやり取りを繰り返し,先にカードがなくなったほうの負けという単純なものだが,1枚ずつのやり取りでは勝負がなかなかつかない。ディーのカードが15枚でダムが5枚になったところで,やり方を変えて,もっとたくさんのカードをまとめてやり取りすることで決着を早めたという話である。

 「ふーむ,うまく考えたね」とイモムシ。「だけど,そもそもカードが行ったり来たりするから,どちらもなかなかなくならなくて困るわけだ。コイン投げで負けたほうはカードを1枚捨てるということにすれば,コインを1回投げるたびにカードの総枚数は確実に減っていくから,20回以内に決着するじゃないか」。

 「あ,そうですね。その方法は,少しも考えなかった」とアリス。イモムシは自分の思いつきが気に入ったと見えて自慢気にふんぞり返っているが,アリスは「でも,それって2人にとって公平なのかしら」と疑問顔である。
すると,なにやら紙の上で計算を始めたグリフォン,しばらくしてから顔を上げて「いい思いつきかなと思ったがダメだね。2人とも10枚の最初の段階からそういうことにすればもちろん公平だが,2人の枚数が15–5に分かれた段階からそういうふうに変えるのは,ディーが有利になりすぎるね。ダムにはほとんど勝ち目がない」。

 というわけで,せっかく名案に思えた提案も,グリフォンにあっさり却下され,面目を施すチャンスを逸したイモムシである。

 さて,読者の皆様には次の問題を考えていただこう。先月号の解答でも述べるように,1枚ずつのやり取りを続ける場合,ダムの勝率は5/20=1/4だが,イモムシの提案に変えた場合,グリフォンによるとダムにはほとんど勝ち目がないという。まず,この場合のダムの勝率がどのくらいになるか計算してグリフォンの言葉を確認してもらいたい。

 このやり方と先月号でのやり方の折衷案ではどうだろうか。双子は,カードの表に自分の印を付け,いくつかのグループに自由に分割する。各対戦では,2人それぞれが自分のカードグループを1つ選出する。アリスは両グループのカードを全部集めてよくシャッフルし,それを裏向きにしておいて1枚抜き出す。それに印がついていなかった人のカードはグループごと全部捨てられる。このようにして,グループごとの対戦を繰り返し,先に全グループを失ったほうが負けというやり方である。この場合,カード5枚と15枚をそれぞれグループに分割する上での最善の方法というものはあるだろうか? それとも相手の分割法がわからないと最善の方法もわからないのだろうか? あるいはどう分割しようと同じ結果にしかならないのだろうか?

 また,もしグループへの分割方法は指定されていて変えられないとしたら,各対戦でどのグループを選出するかについて,最善の方法というものがあるだろうか?


答えは,2017年10月号に掲載

再録『パズルの国のアリス3 ハートの女王とマハラジャの対決』

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