パズルの国のアリス

勝負の決着を早めるには(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 トウィードルダムとトウィードルディーの双子兄弟は,飽きもせずまた新品のガラガラをかけての勝負だ。しかし,なべや釜を身に付けて傘での決闘は,何かと頼りにしている伯父が良い顔をしないので,近頃は何かのゲームや賭け事で決着をつけることが多い。今回はあまり新しい方法を思いつかなかったので,単純なコイントスで勝敗を決めようということになった。といっても,1回で決まっては面白くないから,最初にカードを10枚ずつ配り,コイントスで表が出たらディーからダムへ,裏が出たらダムからディーへカードを1枚渡す。これを繰り返し,カードが先になくなったほうの負けというルールに決めた。

 ところが,なかなか決着しない。20回以上もコイントスをして,やっとデイーのカードが15枚,ダムが5枚になったところで,アリスが通りかかったので,ちょっと勝負を中断して,もう少し早く勝負をつける良い方法がないかとアリスに相談を持ちかけた。

 アリスは考える。

 「今,有利になっているという理由でディーの勝ちという案は,ダムが納得するわけないわね。かといって,次のトス1回で決めちゃうというのは,有利になっているディーが納得するわけがない。……あ,これならいいかもしれない」

 「ねえ,こんなのどうかしら。今,2人が持っているカードの表にそれぞれ持ち主の印を付けておいて,全部集めてよくシャッフルするのよ。それを裏向きにしておいて,あたしが1枚抜き出す。それに印がついていた人の勝ちというのはどう?」

 「えー,それって公平なのかな。確かにおれのほうが少し有利だけど,元のままのルールでやったほうがいいってことはないかな」とディー。ダムのほうも前よりさらに自分が不利になっていないかとやや不審顔だ。そこで読者には,新しいやり方が前のルールのままと比べ,どちらに有利になっているか判定してもらいたい。

 結局,双子は,前のやり方とアリスの提案の折衷案というべき,次の方法を採用した。まず,2人は,自分のカードをいくつかの小グループに分ける。例えば,ディーであれば,カードを10枚と5枚の2つのグループに分けてもいいし,1枚ずつのグループを15個作ってもいい。15枚全部からなる大グループを作ってもいい。そうしておいて,双子はそれぞれ自分のグループを1つ選び,アリスの提案による方法でグループ対戦させる。この勝負で勝ったほうは,勝負に使ったカード全部を1つのグループとして自分のものにできる。こうすれば,1回勝負するごとにグループの総数は確実に減っていくので,決着がつくのを早めることができる。読者に考えていただきたいのは,上の勝負が元のやり方を続ける場合やアリスの最初の提案と比べて,どちらかに有利にならないかということだ。また,もし小グループへの分け方や戦わせる順によって勝率に差が生ずるなら,最善の方法を双子にアドバイスしてほしい。

 最後の問題として,もし2人がずっと最初のやり方を変えずにコイントスを続けていたとしたら,最終的にどちらかのカードがなくなり決着がつくまでに何回くらいコインを投げる必要があっただろうか,その期待値を計算していただきたい。


答えは,2017年9月号に掲載

再録『パズルの国のアリス3 ハートの女王とマハラジャの対決』

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