パズルの国のアリス

続・賢者たちのチーム戦(解答)

 最初に正解数がそのまま得点というイモムシの案だが,この場合には戦略に無関係に期待値が1になってしまうというのは次のように考えるとよいだろう。回答者チームはn人からなるとしよう。その全員に0からn−1までの番号を振る。主催者側による帽子のかぶせ方に特殊な癖がないとすると,n人のそれぞれにn種の帽子をかぶせるのだから,それにはnn通りのかぶせ方がありそれぞれが均等に起こると考えてよい。今,0番を除いて1番からn−1番までのメンバーにかぶせられた帽子の数値を1つのパターンに固定して考えよう。0番の人は,あるルールでこれらの数値から自分の数値を推測することになるが,実際に自分にかぶせられた帽子は0からn−1までの可能性が均等にあるわけだから,それが当たる確率は1/nである。これは,1番からn−1番までの帽子の数値が何であっても同じことだから,nn通りあるかぶせ方のうち当たるのはその1/nである。他の1番からn−1番までのメンバーによるどの推測についても同じことだから,得点期待値はそれぞれの推測が当たる確率の和すなわち1/n×n=1にしかなりようがない。

 次に変更案1だが,この場合,全員が正解すればイモムシ案と同様n点になるがそうでないと得点は得られない。もちろん,上に述べたように,どのメンバーも単独の正解確率は1/nにしかなりようがない。アリスが言うように全員でたらめに推測したりすると,全員が正答する確率は1/nnで得点期待値は1/nn−1になってしまう。だから,案1で得点期待値が下がらないようにするには,一部の人だけが正解するという事態を避けるしかない。

 それを実現するのは意外に簡単で,あらかじめ相談して,チームの数値の総和をnで割った余りの想定値を決めておけばよい。各メンバーはその想定通りに自分の帽子の数値を推測する。たとえば,想定値が0,すなわち総和がnで割り切れると想定した場合,1番からn−1番までの帽子の数値の総和をtとすると0番の人は自分の数値の推測値p0tp0nで割り切れるように決めればよい。他のチームメートも同様だ。こうすると,実際にかぶせられた帽子数値の総和がnで割り切れた場合は,全員が正解して得点nが得られる。そうでないと全員が不正解となる。想定が正しい確率は1/nだから,得点期待値は1/n×n=1だ。

 考え方は同じだが,変更案2に対する戦略のほうが変更案1に対するものよりも見つけにくいかもしれない。今度の場合,複数人が正解しても得点は1にしかならない。ちなみに,全員がでたらめに推測すると1人も当たらない確率は(1−1/nnであり,これはよく知られているようにnについて単調増加で1/e≈0.368に収束する。したがって,誰かが正答する確率についてのアリスの勘は正しくなく,nが大きくなると少しずつ下がり,1−1/e≈0.632に収束するが,ともかく1よりはだいぶ小さくなる。複数人が当たると2人目以降の正解分が無駄になるので,それを防ぐには正解する人がただ1人になるようにするのが戦略のポイントだ。

 そのための方法の1つとしては,たとえば次のようなものがある。今,実際にかぶせられた帽子の数値の総和をsとし,s′=s mod n,すなわちsnで割った余りをs′としよう。s′はチームの誰かの番号に等しい。そこで各メンバーが自分の数値をどう推測するかだが,全員,自分の番号こそs′に等しいと思い込むのがよい。つまり,k番の人は,自分以外のメンバーの帽子の数値の合計tを求め,自分の数値pkt+pkss′=k(mod n)を満足するものと考える。だから,pk=(kt) mod nを計算し,それを推測値とするのだ。その結果,番号が本当にs′のメンバーだけが正解し,他の全員が間違える。つまり,帽子番号のどんな組み合わせに対しても必ず正解者が1人出ることになる。

 このように考えてくると,たとえば,k(1≦kn)という数を決めて,正解者がk人以上いるとk点もらえるがk人未満では0点というような得点案の場合も,うまく戦略を立てれば得点期待値が1よりさほど下がらなくてすむと考えられる。ただ戦略は複雑になるかもしれないので,実際にどういう戦略を採ればよいかは読者の皆さんに考えていただこう。

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