パズルの国のアリス

いつ賭ける? いくら賭ける?(問題)

 アリスがイモムシ探偵局にいると,マハラジャ出身ではないかと噂される例のお大尽がやってきた。いつも自分が損をするような賭け事はないかと探しているお大尽だが,今度もそういう相談だ。

コイン投げにも飽きたから,カードを使う賭けで10枚くらいで簡単に遊べるものということで考えていたら,次のようなものを思いついたという。

 表が赤に塗られたカードと青に塗られたカードを5枚ずつ用意する。それをよくシャッフルし裏向きに重ねておく。もちろん裏からでは表の色はわからない。賭けの相手をアリスとしよう。これからカードを上から1枚ずつめくっていくのだが,アリスはいつでも「ストップ」と声をかけることができる。その声の後にカードをめくり,赤だったらアリスの勝ち,青だったらマハラジャの勝ちである。ただし,アリスがいつまでも「ストップ」をせずに最後の1枚になった場合は,自動的にその最後の1枚で勝負をすることになる。

 マハラジャの考えでは,「ストップ」をかける権利がアリスにあるので,カードの出方を見ていて,青のカードが赤より十分多く出たころを見計らって「ストップ」すればよいから,アリスに有利だろうということだ。

 「自分ならどうするだろう」とアリスは考えてみた。最初の1枚に賭けるのは少しも面白くない。まず1枚めくってみて,それが青なら次のカードに賭ければ勝率は5/9だ。赤なら4/9に下がってしまうので,しばらく様子を見て,残りカードの中の赤の枚数が青の枚数を上回ったところで「ストップ」するといい。問題は,そういうやり方で進めて最後の1枚になってしまうと,確実に負けるとわかっていても,そのカードに賭けざるを得ないことだ。

 さて,読者への最初の問題だ。上記の方法でもそれ以外でもよいが,アリスを有利にする戦略があるならそれを示し,それでアリスの勝率がどのくらいになるかを計算してもらいたい。また,アリスが上記の戦略を採用した場合,心配していたこと,すなわち確実に負けるとわかっている最後の1枚に賭けねばならない事態に至る確率はどのくらいだろうか?

 探偵助手のグリフォンは,マハラジャの話を聞いていて,「相手が利口なら,もっと確実に負けられる賭けの方法があるよ」と言い出した。どういう方法かと聞くと「簡単さ。赤が相手の勝ちと決めておかないで,どっちの色が出るかに賭けさせるといい。これなら,それまでに出ている枚数の少ない色に賭ければ,勝率は上がる。そうだね,最初に銀貨1枚を何枚かのチップに交換する。で,毎回カードをめくるたびに,好きな枚数をそのカードが赤か青かに賭けるというのはどうかな。外れたときはチップは没収され,当たれば同数のチップがもらえる。10回の勝負が終わったときに,最初と同じレートでチップは銀貨と交換できる。これなら元手を確実に4倍以上にする手段があるけど」。

 読者には,グリフォンの言葉通り,この場合にアリスが元手を確実に4倍以上にするための賭け方を考えていただきたい。その賭け方を実現するためには銀貨1枚の交換レートはかなりの枚数のチップにする必要がある。それも同時に考えていただこう。


答えは,2016年11月号に掲載

再録『パズルの国のアリス3 ハートの女王とマハラジャの対決』

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