顔色をうかがい合うクラブ王室の面々(問題)
不思議の国のトランプ王宮では,春を迎え,久しぶりに城内の内装を変えて気分を一新しようということになった。クラブ,ダイヤ,ハート,スペードの各王室ごとに集まってくつろげるように,それぞれが城内に1つずつ談話室を持っているのだが,今回はその模様替えの顛末だ。
ハート王室のように,何でも独断で決めてしまうわがままな女王がいれば,かえって事が簡単になる場合もあるのだが,クラブ王室では,談話室を華やかで明るい色に塗りたいという女王と,落ち着いた渋い色に塗りたいという王の間で意見が対立していた。それではと,ジャックの好みを聞いたところ,ジャックは王と女王の顔色をうかがいながら,あまり積極的でない様子で女王の意見にくみした。
なんとなく心許なく思ったクラブの王侯たち,このさい民主的に,兵士たちの好みも参考にしようということで,中立なアリスに頼んで兵士たちを順次談話室に呼び入れてもらい,意見を聴取することにした。しかし,兵士たちも,ジャックと同様にまったく定見というものがなく,自分の意見を求められたとき,その場にいた人の意見比率に応じて,その態度を決めた。つまり,自分が呼ばれたとき,女王派がn人,王派がm人いたとするなら,その兵士はn/(n+m)の確率で女王派になり,m/(n+m)の確率で王派になるというわけだ。
さて,10人いる兵士全員を呼び入れて,好みを聞き終わったとき,全員では13人だからそのときの多いほうの意見を採用することで,なんとか模様替えの方針は定まったのだが,ここで読者への問題である。王侯たちだけの段階では,女王派2人,王派1人という状況だったのだから,10人の兵士の意見が加わっても,女王派のほうが多くなりそうなのは間違いないが,最終的に女王派の人数は何人くらいになるだろうか,まずその期待値を求めていただきたい。次に,女王派と王派のどちらが多かったにせよ,多数派は少数派に何人くらいの差をつけて勝利したのだろうか,その期待値を求めていただきたい。
答えは,2016年7月号に掲載
