パズルの国のアリス

進化した8の字ミミズの逆襲(解答)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 結論から述べると,問題のどの形のミミズでも,平面上に非可算無限匹を重ならないように住まわせることはできない。体の一部に三叉分岐があることがポイントで,典型的にはλがそうだが,他の形のミミズ(たとえばα)であっても,その体にλと同相な部分がある。だから,もしαミミズが重ならずに非可算無限匹住めるなら,λミミズだってそうできるということは納得していただけるだろう。

 さてλミミズがユークリッド平面上に非可算無限匹住むと必ず重なってしまうことの証明はかなり巧妙なもので,たとえば次のように考えを進めるとよい。ミミズは3本の腕を持つが,有理点(座標がどちらも有理数の点)は平面上で稠密に存在するので,腕のうち1つだけと交わり他の2つの腕とは交わらないような有理円(有理点を中心として有理数を半径とする円)が描ける。しかも,半径を十分小さくとれば,1本の腕とだけ交わる3つの有理円で互いに交わらないものが描けよう(下図)。

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 平面上に非可算無限匹のλミミズが住んでいるとし,各ミミズの腕にそれぞれと交わるこのような3つの有理円(腕輪と呼ぼう)をつける。aというミミズの腕輪の集合をΨa)と書くと,これは3つの有理円からなる集合だ。有理円を決めるものは,その中心の座標と半径だが,これらはいずれも有理数なので全部でも可算無限個のバリエーションしかない。よって有理円の全体は可算集合であり,有理円が3つ集まった集合も可算無限個のバリエーションしかない。

 従って,ミミズaに有理円3つからなる集合Ψa)を割り当てる写像Ψは非可算集合から可算集合への写像ということになり,単射(1対1の写像)ではありえない。それどころか,3 匹の異なるミミズabcΨa)=Ψb)=Ψc)={DEF}となるものがいる(実は,もっとすさまじい帰結を述べるなら,非可算無限匹のミミズで全員の腕輪が共通というようなものがいる)。ここで腕輪DEFを1点に縮退させて考えると,ミミズabcの腕の付け根は,それぞれがDEFとミミズ自身の腕でつながっている。つまり,abcの腕の付け根とDEFは,腕を結線として,グラフ理論でいう完全2部グラフK33を構成する。K33が結線を交差させることなしに平面に描けないことはよく知られている……というか,ちょっと試みてみれば明らかなことであろう。

参考にした本
Mathematical Puzzles:A Connoisseur's Collection(2004),
Mathematical Mind-Benders(2007) P. Winkler。
邦訳は『とっておきの数学パズル』(2011年),『続・とっておきの数学パズル』(2012年),ピーター・ウィンクラー著,坂井公・ 岩沢宏和・小副川健訳,日本評論社。

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