パズルの国のアリス

ビルとエースの賢者ダブルス戦(解答)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 ウォーミングアップまたはヒント問題の答えは簡単にわかったことだろう。2人が全くデタラメに答えると,2人とも正答する確率は1/2×1/2=1/4になってしまうが,それを避けるには,どういうやり方でもよいが,2人の解答が一致するようにしておくのだ。極端なやり方をするなら,2人ともいつも○と答えればよい。正解の半分くらいが○だと期待できるので,2人ともデタラメに答えるよりははるかにましである。逆に2人がいつも反対の答えをするようだと,得点は0になる。

 さて考えるべきは,1人が正解を全問知っているときに2人の解答をどう調整すれば得点が挙げられるかである。ポイントは,問題は全問まとめて一度に与えられるのに,解答は1問ごとに採点され,その都度各人の解答と正解が伝えられることにある。つまり,通常の意味での情報交換は禁じられていても,互いの解答を用いて通信が可能になっているところがこのパズルのポイントなのだ。

 詳細に分析して巧妙な手段を構築すれば,さらに得点率を上げることもできようが,簡単に実行できる手法で,得点率がおおむね2/3以上になるやり方を述べよう。まず,ビルが実行するアルゴリズムである。

(1)最初の1問は捨てる。つまり○でも×でもデタラメに答えてよい。

(2)次の3問(第2〜4問)は,第1問に対してエースが答えたのと同じ答えをする。つまり第1問に対するエースの答えが○なら3回続けて○,×なら3回続けて×と答える。

(3)以降は,問題を3つ毎に区切り次の戦略に従う。前の3問に対する自分の解答の中に不正解があったら,そのときにエースの答えたのと同じ答えを次の3問についてはする。前の3問に対する自分の解答が全部正解だったら,最後の問題へのエースの答えを次の3問についてはする。

 このアルゴリズムにより,ビルの答えは,最初の1問を除いて完全にエースのコントロール下におかれることがわかるだろう。ではエースはどうすればよいか?

 問題はすべて明かされているから,全問の正解を知っているエースには正解の○×列がどうなるかが前もってわかる。そこで,最初の1問を除いて,問題を順に3つずつ分割し,次のように答えるのだ。

(1)最初の1問では,次の3問(第2〜4問)の正解に多く含まれているほうを答える。つまり○が2つ以上なら○,×が2つ以上なら×と答える。

(2)以降は,ビルがどう答えるかがエースには完全にわかる。しかも3つ毎に区切られた問題のうち少なくとも2つにビルは正答し,誤答するとしても1つだけである。また,誤答するとすればそれがどの問題かも前もってわかる。そこでビルが誤答する場合には,その問題のときの答えとしてエースは次の3題の正解に多く含まれているほうを答える。もちろんビルが正答するときは,エースも正解を答える。もしビルが3問とも正答するようであれば,エースは最初の2問には正しく答え,最後の1問でビルに対して指示を出せばよい。

 参考のため,最初の22題に対して,2人がどう答えるかの例を下図に示す。

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 最初が正解列で次の2つの列はビルとエースの解答である。エースの解答の×は,もちろん見かけ上は○と×のプレートを挙げるのだが,実はそれは解答というより,次の3問に対するビルへの解答指示であることがミソだ。第22問へのエースの答えは,第23〜25問への正解列がないと決まらないので空けてある。この例から,最初の1問を除いて,3問ずつに区切られた問題のうち,少なくとも2問には2人とも正答できることを納得していただけるだろうか。

参考にした本
Mathematical Puzzles:A Connoisseur's Collection(2004),
Mathematical Mind-Benders(2007) P. Winkler。
邦訳は『とっておきの数学パズル』(2011年),『続・とっておきの数学パズル』(2012年),ピーター・ウィンクラー著,坂井公・ 岩沢宏和・小副川健訳,日本評論社。

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