ババが2枚のババ抜き (問題)
ヤマネと帽子屋が,カードを使ってなにやらゲームをやっている。「キヒヒ,またお前の負けだ」と帽子屋。
アリスは,好奇心ではちきれそうになっているのだが,へたに口を出すと帽子屋に怒られそうなので,おっかなびっくりで少し遠目に観察していたところ,どうやら一種のババ抜きをやっているらしいとわかってきた。2人で互いに手札のカードを抜き合い,同じカードが対になると場に捨てる。
「2人でババ抜き? そんなのどこが面白いのだろう」といぶかしがるアリス。そのうち,帽子屋がヤマネの手札からジョーカーらしいものを引き,ヤマネがうれしそうな笑顔を見せる。ところが,アリスが見ると同じような札が,帽子屋の手札の中に既にあるのに,帽子屋は捨てようとしない。
アリスは思わず口を出しそうになったが,「いやいや,何かあるに違いない」と思ってこらえていると,すぐそばで2人の様子を同じように観察していた三月ウサギがささやいた。
「そうそう。少し,お利口になったね。わからないことにはむやみに口を挟まないほうがいい。ババはね,他のカードと違って2枚揃っても捨てられないのさ」
「え,ではどうやって勝負がつくんですか?」
「ババ以外のカードが全部捨てられたとき,ババ2枚を持っていたほうが負けさ。あるいはその次がカードを引く番でババが2枚集まってしまったら負けだ」と三月ウサギ。そして不思議そうに続ける。「ところが,変なんだよな。さっきから見てると,やたら帽子屋ばかりが勝つ。カードに何か仕掛けでもあるのかな」。
それを聞いていた帽子屋,烈火のごとく怒って「やい,三月ウサギ。そこのお嬢さんが多少分別を身に着けたってのに,てめえは何だ。勝手な憶測でものを言うんじゃねえ」。
確かにカードには仕掛けはなさそうだし,2人とも相手にカードを引かせる前にはよくシャッフルしている。最初はジョーカーと1からnまでのカードを1枚ずつ持って始めるが,どちらが先に引くかは一勝負毎に交代で,毎回変えることといえばジョーカー以外のカードの枚数nくらいだ。一見,平等に見えるこのババ抜き,どうなっているのだろうか。
あとで,グリフォンと検討してみて,アリスは,仕掛けがカードそのものではなく,カードの枚数nの選び方にあることを知ったが,帽子屋はどのようなトリックを使ったのだろうか。その答えは,ジョーカー以外のカードをn枚ずつ持って,このババ抜きを始めるとき,最初にカードを引く人の勝率を計算すれば,自ずから明らかになるが,nの値によってその勝率はどのように変化するだろうか。もちろんカードはよくシャッフルされていて,m枚のカードから1枚を引くとき,どのカードが引かれるかの確率はどれも1/mとする。
答えは,2014年5月号に掲載
