もっと赤字を!!(問題)
アリスは,例のマハラジャの出身ではないかと噂されているお大尽のところを,また訪ねていた。この人物は,酔狂にも,自分が不利とわかりきっている賭けをやたらと持ちかけては,赤字がかさんでいくのを楽しんでいるのだ。ポケットから銀貨を出させてそれを投げる。裏が出れば勝ちでその銀貨を没収するが,表が出れば負けでそれを3枚の銀貨と交換してやるというものだ。
「どうですか? 赤字は,さらに溜まりましたか?」とアリス。
「ウーム。それがなかなか溜まらなくての」とお大尽。
「先日,賭けの結果を記録していたノートが一冊尽きてしまったのじゃが,赤字額があまり大きくなっていなかった。そこで,新しいノートに切り替えたタイミングで,賭けのやり方を変えることにした」
「え?」
「勝ったとき銀貨を没収するのは同じだが,負けたときは,さらに気前よく4枚の銀貨と交換してやることにした」
「ということは,負けると3枚の赤字ということですか?」
「そうじゃ」とお大尽。「それに,賭けの結果を毎回記録するのも面倒だ。そこで,負けているときは愉快じゃから,どんどん賭けを続けることにして,勝ったときにだけそのときまでの累計をノートに記すことにした。するとすごいぞ。累計額も,新しいノートに替えたときを0にして,あらためて数え始めたのじゃが,最初,3回立て続けに負け,次にやっと勝ったから,いきなり銀貨8枚の赤字と記録された。その後も10枚,15枚と順調に赤字が伸びておる。実に気持ちがよいのう」と,アリスにノートを見せた。
さて,この酔狂なお大尽の遊びには,アリスだけでなく読者もあきれておられると思うが,この辺りで問題である。今,ノートの赤字累計は偶数枚としよう。次に記される赤字累計が再び偶数になる確率はどのくらいだろうか?
また,赤字累計として次に奇数が記録されるまでには平均で何回くらいこの賭けをやる必要があるだろうか? もちろん,銀貨を投げたとき,表裏どちらが出るかは半々とし,累計額が記録されるのは裏が出てマハラジャが勝ったときのみとする。
答えは,2013年8月号に掲載
