マハラジャの風変わりな賭け遊び(問題)
このところ,不思議の国も鏡の国も,どこからか現れたお大尽のうわさでもちきりである。インドのマハラジャの出身ではないかと囁かれているその人物は,だれかれとなく捕まえては次のような風変わりな賭けをもちかけるのだ。銀貨を1枚ポケットから出させて,それを投げる。裏が出たらその銀貨は没収されるが,表が出たらそれを3枚の銀貨と交換してくれる。銀貨は特に歪んでもいないから,お大尽が勝つことももちろんあるが,長い目でみれば赤字になるはずだ。
アリスが興味津々で会いに行くと,その人物は賭けの結果のやり取りを記録したノートを眺めて悦に入っていた。
「ひゃっはっは,もう赤字が銀貨500枚にもなったぞ。面白いのう」
何が面白いのかアリスにはお大尽の気持ちはわからないが,のぞき込むとノートにはこれまでの賭けの結果と赤字の合計額が克明に記録してあった。
「このまま続けると,やがて赤字が銀貨1000枚を超えようが,いつごろになるかのう?」
「その賭けを1日何回やるかによるでしょうけど」とアリス。
「さよう。大体,1日3回強で,1カ月では100回くらいじゃのう」
読者には,まずウォーミングアップとして,このペースで賭けを続けていくと,赤字額が銀貨1000枚を超えるのが,何カ月後くらいかを計算していただこう。もちろん,銀貨を投げて裏表どちらが出るかは半々とする。
さらにお大尽は「おう,このノートによると,黒字になったことは一度も無いようじゃ。残念じゃのう」と少しも残念でなさそうに言う。
「この先も赤字はどんどん増えるだろうから,黒字になることなどはなかろう。赤字の枚数でもこのノートに記されたことのない数がポツポツとあるようじゃ」
さて,読者への次の問題は,この後も限りなくこの賭けを続けるとして,この場合のように,一度も黒字にならない可能性はどのくらいあるかを計算してもらうことだ。また,赤字の枚数としてノートに記されることのない数は,自然数全体の何パーセントくらいになるだろうか。
答えは,2013年6月号に掲載