遠慮深いと得する?(問題)
外国に長期滞在しているヤマネの兄が,留守宅に土産物を送ってきた。色々なものがあったが,7人のヤマネの姪たち(ヤマネの兄の娘で,生まれた日にちなんでそれぞれ曜日の名前を持つ)に送ってきた缶入りキャンディーの分配法が問題になった。缶を開けて,キャンディーの個数を数えてみると,7で割り切れないのだ。
知恵のないヤマネがどうしたものかと考えているうちに,姪たちの間で奪い合いが始まり,収拾がつかなくなった。全部のキャンディーが誰かのポケットに収まったとき,ついにサンデイが泣き出した。「ひどいわ,ひどいわ。あたしは5個しかない。マンデイなんかあんなにいっぱい取ったのに」。
幸いグリフォンが通りかかったので,助けを求めると,グリフォンは「まあまあ,サンデイちゃん,落ち着いて。そうだね,とにかく名前の順に輪になって並びなさい。サンデイちゃんは,マンデイちゃんとサタデイちゃんの間だよ」。
いつも知恵を貸してくれるグリフォンの言葉なので,しぶしぶながら姪たちも従う。
「さてどうしようか。キャンディーの数は7の倍数ではないと。ふーむ,でも70個よりは多かったんだね。すると,少なくとも1人10個はもらってもいい。では,完全には平等とはいかないが,こうしてみよう。サンデイちゃん,キミは今5個しか持っていないんだね。では,10個に足りない分5個ずつを両隣のマンデイちゃんとサタデイちゃんからもらっていいことにしよう。合わせて15個になるけど,5個は最初遠慮していたことへのご褒美だ」。
すると,今度はサタデイから不満の声が上がる。「そんなのないわ。マンデイは最初にたくさん取ったから大丈夫でしょうけど,サンデイに5個もやったから,あたしはたった4個になっちゃったわ」。
「おや,キミも結構遠慮してたんだ。いいよ,そしたら,キミも今不足している6個を両隣からもらうことにしよう。あれ,すると今度はサンデイちゃんが,また10個に足りなくなっちゃうね。それにフライデイちゃんも足りなくなるかもしれない。まあ,いいさ。10個に足りない人がいれば,その分を両隣りからもらうというのを続けることにしようよ」。
今度は,子供たち全員からブーイングが上がった。「そんなこと言ったって,それがいつまでも続いて終わらなかったらどうするのよ」。
グリフォンはニヤリと笑って「まあ,やってみなって」と言っただけだが,さて,このキャンディーのやり取り,いつか必ず終わると言えるのだろうか? いつまでもやり取りが続く場合があるなら,その場合の最初のキャンディー分配はどうなっているだろうか。最初の分配がどうであろうとこのやり取りが永遠に続くことが決してないなら,そのことを証明してほしい。
念のため,1つだけ申し添えると,状況によっては,やり取りの途中で隣からの要求に応えるに十分な個数のキャンディーを持っていない場合が生じうるが,その場合は,帳簿上の赤字処理をして(または手形を発行して),ともかくやり取りは続けることにする。
答えは,2012年10月号に掲載
