ハートの4の受難(問題)
先月号に続いて,今月もハートの兵士たちによる大手門前のパレードの話にもう少しお付き合いいただきたい。最初適当な間隔で東西の守衛所の間にエースから10までの兵士10人が並んで正午の合図とともに一斉に始めるパレードだ。兵士は,常に同じ速度でそれぞれ東西どちらかに向けて歩き,鉢合わせするとどちらもくるりと反転する。
今日もまた,ハートの女王の気まぐれで,新しいルールでやれと言われて兵士たちは閉口していた。通常,各兵士は東西どちらかの守衛所に到達したらパレードは終わりで,守衛所に入って休んでいいことになっているが,今日は守衛所に到達してもそこで反転してパレードを続けるようにという指示だ。パレードは各兵士が延べでちょうど東西の守衛所の距離分200mを歩いたところで終了する。さらに,間隔は自由だが,兵士は最初エースから10まで西から順に並ぶようにという指示だ。
その間,女王は大手門の真ん前に立ってパレードを閲兵するつもりらしい。ハートの4が愚痴を言う。「まったくいやになるぜ。ただでさえ新ルールで面倒くさいのに,俺なんか比較的真ん中近くをうろうろすることになるので,いやでもあのうっとうしい女王様のお顔を間近で見ることになる」。
それを聞いたスペードのエース,ちょっと考えてから,ニヤリと笑って「ふーんそうかい。それじゃ,もっと楽しめるように俺が魔法をかけて,パレードが終わったとき,お前の目の前に女王様がいるようにしてやるよ」。
大手門は東西の守衛所のちょうど真ん中にあり,女王はそこにどんと腰を据えていたが,スペードのエースが予言した通り,ハートの4は女王の真ん前でパレードを終了するはめになった。実は,スペードのエースは,兵士の1人に耳打ちして,その最初の行動を指示しただけである。エースが誰にどういう指示をしたかを考えていただきたい。
さらに翌日も,ハートの女王の気まぐれは続いた。今度は,守衛所では反転するわけでもそこに入って休むわけでもなく,そのまま行進を続けるようにという。あまり遠くへ行かれても困るので,パレードは全員が延べ130mを歩いたところで終了する。さらに,前日と同様,兵士は最初エースから10まで西から順に並ぶ。ただしエースから5までの5人は東向きに,6から10までの5人は西向きにスタートするようにという指示だ。
スペードのエースがハートの4に言う。「毎日毎日,大変だな。おまけに,昨日は俺のいたずらでいやな顔を間近に見ることになってしまったし。お詫びに,今日はあらかじめお前がパレードを終える位置で待ってて,その後に昼飯でもおごるよ」。
さて,スペードのエースがハートの4のパレードを終える位置を前もって知るためには,上に述べた以外にどういう情報があれば十分だろうか?
答えは,2012年6月号に掲載
