パズルの国のアリス

その正八面体サイコロはインチキ?(解答)

坂井 公(筑波大学)題字・イラスト:斉藤重之

 

解答例このコラムの大先輩である一松信先生から下記とほぼ完全に同じ解答が寄せられた。また,問題のサイコロは「シチャーマンのサイコロ」(Sicherman dice)と呼ばれるもので,本誌1978年4月号の「数学ゲーム」でマーチン・ガードナーが紹介していることを教えていただいた。記して,御礼申し上げ る。 

さて,解答だが,立方体サイコロの場合,1つの目を1,2,2,3,3,4とし,もう1つの目を1,3,4,5,6,8とすると,この2つを対にして同時に振ったとき出る目の合計の確率が,通常のサイコロを2つ振った場合と同じになる。

この対を試行錯誤で導き出すことは相当の難問だろう。もう少し体系的にこの問題を考えるには,母関数を考えるのが良い。ここでは通常のサイコロの母関数として,多項式P6(x)=x+x2+x3+x4+x5+x6を考える。この場合,母関数のkxnという項はnという数が出る目の組み合わせがk通りあることを表す。つまり,上のP6(x)の式の場合,1から6までの目(nに相当)がどれも1通り(kに相当)の出方があることを表す。ポイントは母関数P(x)とQ(x)を持つサイコロを同時に振ったときに出る目の合計の母関数はP(x)Q(x)になることだ。実際,多項式P6(x)2はx2+2x3+3x4+4x5+5x6+6x7+5x8+4x9+3x10+2x11+x12であるが,例えば3x4という項は,普通のサイコロを2つ同時に振ったとき,合計が4になる目の出方が3通りあることと一致する。

さて,これで問題はP(x)Q(x)=P6(x)2となるような母関数P(x)とQ(x)を持つサイコロでP(x)=Q(x)=P6(x)以外のものを探すことに帰着される。これは因数分解の問題だ。P6(x)はx(x+1)(x2+x+1)(x2-x+1)と既約因子に分解されるので,P6(x)2=x2(x+1)2(x2+x+1)2(x2-x+1)2 である。従って,例えばP(x)=x2(x+1)2(x2-x+1)=x2+x3+x5+x6,Q(x)=(x2-x+1)(x2+x+1)2=x0+x1+2x2+x3+2x4+x5+x6という母関数を持つサイコロが作れれば,目的は達成される。つまり,2,3,5,6という目を持つ正四面体のサイコロと,0,1,2,2,3,4,4,5, 6という目を持つ九面体(?)のサイコロなら良いが,もちろんこれは条件に適さない。サイコロに課された条件より,P(x)もQ(x)も,それを構成する 項kxnは係数kも次数nも正の整数であり,かつ各項の係数の合計が6であることが要求される。この条件を満たすP6(x)2の因数分解は存外少なく,実はP(x)=Q(x)=P6(x)以外には,P(x)=x(x+1)(x2+x+1)=x+2x2+2x3+x4,Q(x)=x(x+1)(x2+x +1)(x2-x+1)2=x+x3+x4+x5+x6+x8があるだけだ。この2つの母関数に対応するサイコロは先に述べたものに他ならない。

同様に通常の正八面体サイコロの母関数はP8(x)=x+x2+x3+x4+x5+x6+x7+x8である。P8(x)=x(x+1)(x2+1)(x4+1)だから,P8(x)2の因数分解P(x)Q(x)で先述と同じ条件を満たすものを探すと,P(x)=Q(x)=P8(x)以外には,

 

①P(x)=x(x+1)(x2+1)2=x+x2+2x3+2x4+x5+x6

Q(x)=x(x+1)(x4+1)2=x+x2+2x5+2x6+x9+x10

②P(x)=x(x+1)2(x2+1)=x+2x2+2x3+2x4+x5

Q(x)=x(x2+1 )(x4+1)2=x+x3+2x5+2x7+x9+x11

③P(x)=x(x+1)2(x4+1)=x+2x2+x3+x5+2x6+x7

Q(x)=x(x2+1)2(x4+1)=x+2x3+2x5+2x7+x9

 

が見つかる。最後の③から得られるサイコロの対は白の騎士が考案したものと同じだが,最初の①からは,1,2,3,3,4,4,5,6 と1,2,5,5,6,6,9,10という対,②からは1,2,2,3,3,4,4,5 と1,3,5,5,7,7,9,11という対が得られる。

 

参考にした本:Mathematical Puzzles: A Connoisseur’s Collection(2004)Mathematical Mind-Benders(2007) P. Winkler著

 

 

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