正八面体サイコロで賭けをしよう(問題)
赤のポーンたちが市松模様の絨毯の上で,輪になってガヤガヤと楽しそうに騒いでいる。何にでも好奇心旺盛なアリスが思わず覗き込むと,1人が手の中からサイコロのようなものを転がした。よく見ると,確かにそれはサイコロではあるが,通常の立方体のものではなく,ピラミッドを2つ合わせたような形,つまり正八面体形をしている。もちろん各面には普通のサイコロのように数字が振ってある。
「お,7。へへ,また俺の勝ちだね。やっぱりセブンは,ラッキーナンバーだ」とポーンの1人が言う。
「面白い形のサイコロですね」と思わず口を出すアリス。「あたしの国でも,見たことがあるような気はするけど……でも,普通サイコロは四角だわ」。
「ああ,そうかもしれないね。でも,鏡の国では,正八面体のサイコロもよく使うよ。君も知っての通り,この国は何でもチェス盤構造をしているので,8が単位になっていると便利なのさ。実際,俺たちもちょうど8人いるから,立方体サイコロで賭けをやろうとすると,ちょっと面倒だ」
それはそうだろうと,アリスはうなずく。「ところで,どういう賭けなんですか?」
「簡単だよ。あらかじめ,俺たちがそれぞれ違うサイコロの目の1つに賭ける。賭け金はいつも同じで,自分の目が出た者の総取りだ。それを何度かやるだけさ。1回も勝てないで終わる奴がいると気の毒だから,普通は全員の目が最低1回出たところで終わりにするんだ」
もう1人のポーンが口を挟む。「だから,終わってみると,あんまり差が出ないことも多いんだが,今日はひどいね。俺の目は6なんだけどもう20回も振っているのにまだ一度も出ない。もう破産しそうだよ」。
さて,20回続けて6以外の目が出る確率を計算するのは,ウォーミングアップとしても読者には簡単すぎるだろう。そこで次のような問題はいかがだろうか? 全員の目が最低1回は出たところで賭けを終えるものとしたら,この賭けでは平均何回八面体サイコロを振ることになるだろうか?
もちろん,サイコロに細工はなく,各面が均等に出るものとする。
今月の問題
鏡の国の赤のポーンたち8人がサイコロを使った賭けをしている。サイコロは普通の立方体ではなく,正八面体で各面に1から8の番号が振ってある。ポーンたちの賭けはいたって単純。あらかじめ自分たちに番号を振っておき,ずっとその目に賭ける。掛け金はいつも同じで勝った者の総取り。6のポーンは「もう20回もサイコロを振っているのにまだ一度も出ない」とアリスにこぼす。ただし,一度も勝たない者がいるのは気の毒だから,全員の目が最低1回は出たところで終える。さて,この場合,賭けを終えるまでに平均して何回,正八面体サイコロを振ることになるか?
もちろん,サイコロに細工はなく,各面は均等に出る。
答えは,2011年4月号に掲載