給仕長・帽子屋のたくらみ(問題)
帽子屋と三月ウサギとヤマネの3人組が,例のいつ果てるとも知れぬお茶会の準備をしていると,ハートのジャックが部下を連れて乗り込んできた。ジャックはテーブルを見回し,「なるほど,おあつらえ向きだ。女王陛下は,性格は悪いが目の付け所がいい」。
3人が何のことかと怪しんでいると,「急遽,トランプ王国の晩餐会を3晩連続で開くことになった。ここでやれば準備が簡単でいい」という説明だ。
それを聞いた帽子屋はかんかんになった。喰ってかからんばかりだったが,ジャックが機先を制して,「おとなしくしておいたほうがいいぞ。さもないと……」と首に手を当てた。ハートの女王の口癖のことは,3人組も聞いている。しゃくだが仕方なくテーブルの片づけを始めた。
さて,晩餐会は,トランプたち総勢52人がぐるりとテーブルを囲んで始まる。帽子屋は給仕長として,各人を席に案内する役が振り当てられた。各席の間に ナプキンがおいてあり,トランプたちは席に着いたときに左右どちらかのナプキンを取るが,テーブルマナーには縁がないらしく,案内された席の両側にナプキ ンが残っていると,どちらかをでたらめに選んで取っていた。その結果,席に着いたときには左右どちらのナプキンも残っておらず,あぶれてしまうトランプがいたり,反対に使われずにテーブル上に残ったままのナプキンもあった。
初日にその様子を見ていた帽子屋は,会場を乗っ取られた腹いせに,ナプキンにありつけないトランプを少しでも増やしてやろうと,次のような策略を考えた。最初のトランプが右のナプキンを取ったとしよう。そうしたら,次はその右に1つ空けて座らせる。この2人目のトランプが左のナプキンを取れば,間に座 る人のナプキンはなくなり,ささやかな復讐が果たせる。3人目は2番目のすぐ右隣に座らせればい。一方,2人目のトランプも右のナプキンを取った場合,次 のトランプはまた1つ空けて右に座らせる。
こうして,前のトランプが右のナプキンを取れば次は1つ空けて右隣に,左のナプキンを取ればすぐ右隣にと,円が閉じるまで続けていく。円が閉じたあとは,残った人を空いている席に適当に案内するが,一部の客はナプキンにありつけないことになる。最初の人が左のナプキンを取った場合は,もちろん,左右対 称に同じ戦略を行う。この戦略では平均で何人くらいからナプキンを奪うことができるだろうか?
さて,帽子屋は2日目に上の戦略で多少の成功を収めたが,帽子屋の策略に気がついた知恵者のスペードのエースがハートの女王に耳打ちした。女王は帽子屋を 呼び,3日目は「席への直接の案内はヤマネに任せ,帽子屋自身は厨房にいて,どの席に案内するか指示だけするように」と命じた。
困ったことに,厨房からでは各人が左右どちらのナプキンを取ったのかがわからない。ヤマネに聞いたところで,そんなことを気にして覚えているはずもない。このような状況で,ナプキンにありつけないトランプを増やすためには,帽子屋はどういう戦略を取るのがいいだろうか?
今月の問題:給仕長・帽子屋のたくらみ
問題:52人のトランプたちが丸テーブルで3晩連続して晩餐会を開く。席に着いたトランプたちは左右のナプキンをでたらめに手にするため,両隣の人にナプキンを取られてしまう“犠牲者”が出る。帽子屋はトランプを席に案内するよう命じられたが,このことに最初の晩に気がつき,2日目は少しでも犠牲者を増やしてやろうと,次のような戦略をとった。最初に案内した人が右のナプキンを取ったら,次の人はその右に1つ空けて座らせる。この2人目が左のナプキンを取ったら,3人目を間の席に案内すれば犠牲者となる。もし2人目も右のナプキンを使ったら,次はまた1つ空けて右に座らせる。前の人が右のナプキンを取れば次の人は1つ空けて右の席に,左のナプキンを使えばすぐ右隣にするわけだ。円が閉じたら空いている席に適当に案内する。最初のトランプが左のナプキンを手にしたら,左右を逆にすればよい。この方法で平均何人の犠牲者が出るだろうか? 帽子屋の企みを知ったハートの女王は「最後の晩は席への直接の案内はヤマネに任せ,帽子屋は厨房からどの席に案内するかの指示だけをせよ」と命じた。厨房からは各人が左右どちらのナプキンを使ったかはわからず,ヤマネを頼ることもできない。この状況で犠牲者をふやすにはどうすればいいだろう?
答えは,2010年1月号に掲載