パズルの国のアリス

アリスと蛇の輪(解答)

坂井 公(筑波大学)題字・イラスト:斉藤重之

 10匹の蛇の場合,賭けには応じない方がいい。ロープの場合,賭け金が銀貨2枚(厳密には銀貨2.13枚)以下なら,賭けに乗ってもいい。

この賭けでいくつ蛇の輪ができるか,その個数の期待値を求めればいい。それが3以上なら賭けに乗ったほうが得だし,3未満なら損だ。蛇の数を少なくして,期待値を計算してみよう。

蛇が1匹なら輪は必ず1つだけできる。蛇が2匹なら輪は1つか2つだが,このどちらかが確率1/2でできるので,輪の個数の期待値は1.5となる。蛇が3匹なら輪の個数は1~3のいずれかだが,蛇の頭と尾の対応は全部で6通りある。輪が3つになるのはそのうちの1通りだけなので,確率は1/6となる。一方,輪が2つになる場合は3通りあり,残りの2通りは蛇がぐるりと大きな1つの大きな輪を作る。したがって,求める期待値は

3×1/6+2×3/6+1×2/6=11/6

で,約1.833 となる。

しかし,蛇が4匹になると,頭と尻尾の対応のさせ方は4!=24通りにもなり,式を立てるのも容易ではなくなる。しかし,ここでちょっと頭をひねるとうまい考え方にたどり着く。

今,n匹の蛇がいるとして,その1匹をどれかの尾に噛み付かせたとしよう。それがうまく本人の尾に噛み付けば輪が1つでき,n-1匹の蛇が残る。では,噛み付いたのが他の蛇の尾だとしたら? このときはつながった2匹をまとめて少し長くなった1匹と考えると,やはりn-1匹の蛇が残っているのと変わらない。つまり最初の蛇が噛み付いたのが自分の尻尾であろうとなかろうと,その後の状況はn-1匹の蛇がいるのと変わらないということだ。

最初の蛇にうまく自分の尻尾に噛み付かせられる確率は1/nであり,その場合,そうでない場合より輪が1つ多くできる。つまり,蛇がn匹でできる輪の個数の期待値は,n-1匹の場合より,1/nだけ多い。したがって,10匹の場合,求める期待値は

1/10+1/9+1/8+……+1/2+1/1

となる。この値は約2.93だから,アリスが賭けに応じるのは勧められない。

蛇ではなく,両端の区別がないロープを結ぶ場合なら,最初に結ぶロープが輪を作る確率は1/(2n-1)になり,それが輪を作ろうと作るまいと,残りはn-1本のロープがある状況と変わらない。したがって,10本のロープの場合,できる輪の個数の期待値は

1/19+1/17+……+1/3+1/1

となる。この値は2.13より少し大きいので,賭け金が銀貨2枚以下ならば,乗った方が得ということになる。

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