日経サイエンス  1999年12月号

日本が生んだ新世代暗号

米田健(三菱電機)

 インターネットが社会に定着し,重要な情報を送る電子メールや電子商取引に暗号を日常的に使うようになってきた。日本で開発された共通鍵(かぎ)暗号MISTYは,処理速度が速く,暗号強度が数値化できる強力な暗号だ。
 共通鍵暗号方式は応用を考えると,携帯電話のように小さな機器にも組み込まなければならない。また,動画通信を暗号化するためには,高速な暗号処理が必要だ。MISTYは,攻撃に対して安全にする,処理速度を速くする,規模を小さくするという3条件をバランスよく実現するため,以下の3つの点を主な目標にした。1つはアルゴリズムの非線形性が数値で表現できること。2つめはハードウエアでも,ソフトウエアでも小規模に実装できること。3つめは1秒間に数百M(メガ)ビットという動画通信にも使える処理速度を実現する点だ。
 こうして開発されたMISTYは非線形性を数値で表せる構造になった。具体的には,線形近似をするのに,少なく見積もっても2の56乗の普通の文と暗号文が必要なのが示されている。また,MISTYはソフトウエアで1秒当たり200Mビット,ハードウエアで1秒当たり600Mビットの暗号処理速度を持ち,実装サイズはソフト,ハードともに他の暗号よりも小規模になっている。

著者

米田健(よねだ・たけし)

三菱電機情報技術総合研究所情報セキュリティ技術部所属,工学博士。専門は情報通信ネットワーク,とくにネットワークセキュリティーについて研究している。