
日本の新鋭望遠鏡「すばる」の強力なライバルとなる米英など国際共同の大型望遠鏡「ジェミニ」が,ファーストライトを迎えた。動き出すまでには,鏡の設計方針をめぐる激論や財政難,現場技術者の苦闘があった。
ジェミニ望遠鏡の無駄がないシンプルなデザインは,優れた設計思想によって実現したが,厳しい財政状況によってなされた面もあった。望遠鏡の先端部は,赤外線の雑音が入りにくい設計になっているが,それは多くの天文学者が望んでいた夜空の広い領域を一度に観測できる広視野カメラの設置を見送った結果,実現した。
総予算は1億8400万ドル。当初計画から800万ドル増額されたが,それは主鏡の反射膜を銀にするために必要な装置などの製作費用に充てられた。一方,日本は1台のすばる望遠鏡に3億5000万ドルを投じている。最先端の技術を採用して,現在到達しうる最高性能の望遠鏡を目指した結果,これほどの費用がかかった。
主鏡の製造をめぐるごたごたもあった。最初,ジェミニ望遠鏡チームの仕様に沿ってコーニング社が最低価格を提示し,一時は,それで決まりかけた。ところが,アリゾナ大学のグループが,別の仕様による製造を主張して譲らず,計画自体が一時,潰れかける事態となった。
原題名
A New Eye Opens on the Cosmos(SCIENTIFIC AMERICAN April 1999)