
世界の自動車メーカーは開発の際の衝突テストを,従来の実車テストからコンピューターシミュレーションによる“バーチャル衝突”に切り替え始めている。コンピューターを使うと時間とコストが大幅に節約できるからだ。実車では作業に4~6カ月,コストが数十万ドルかかっていたのが,コンピューターでは数日から数週間,コストも技術者の人件費程度ですむ。もちろん初期投資では数万ドルから数百万ドルする最新ワークステーションやスーパーコンピューターが必要かもしれないが,これらは社内の他の業務にも転用可能なので,結局は安く済むという。また,コンピューターの性能が上がり,乗っている人の内臓の影響まで正確にわかるようになりつつある。
著者
Stefan Thomke / Michael Holzner / Touraj Gholami
3人は,3年前に独ミュンヘンのBMW研究技術センターで知り合った。ハーバード大学ビジネススクール,技術・業務管理学助教授のトムケはセンターで研究プロジェクトの実地調査に携わっていた。ハーバード大学ではおもに,自動車,電子,製薬産業における研究開発の管理法を研究している。ホルズナーはBMWセンター衝突シミュレーション部門のトップで,ミュンヘン技術大学で機械工学の博士号を取得した。ゴラミはBMW衝突シミュレーション部門のグループリーダーで,ベルリン大学で技術学部修士号を取得した。
原題名
The Crash in the Machine(SCIENTIFIC AMERICAN March 1999)