
核融合の方式は,磁場閉じこめ方式と慣性閉じこめ方式の2つに大きく分けられる。慣性閉じこめ方式は,水素燃料の小球にレーザーや粒子ビームを照射し,その強力なエネルギーで核融合を起させようというものだが,これまでのところ入力エネルギーを超える出力エネルギーを得ることはできていない。
しかし最近,古くから知られているZピンチ現象が,核融合実現への道を開くかもしれないと,脚光を浴び始めた。
Zピンチは,ガスの中に大電流を流したとき,生成されたプラズマが高温・高密度に圧縮される現象である。このときプラズマから爆発的に発生する強力なX線は,それまでに使われていたレーザーや粒子ビームより,燃料を圧縮・加熱するのに好ましい性質をもっており,燃料小球を点火して核融合を起こせるのではないかと考えられている。(本文より)
著者
Gerold Yonas
米サンデア国立研究所理工学部門の副所長。カリフォルニア工科大学での物理および物理工学の研究をへて,1962年にカリフォルニア州パサデナにあるジェット推進研究所で仕事を始めた。1972年にサンデア国立研究所に参加。1984~1986年は,戦略的国防発議組織(Strategic defense Initiative organization)で技術管理を行い,1986~1989年は,カリフォルニア州ラホーヤにあるタイタン技術社の社長を務め,1989年にサンデア国立研究所に戻った。大出力粒子線の分野,慣性核融合,戦略防衛技術および技術移転の分野において,広範な著作活動を行ってきている。
原題名
Fusion and the Z Pinch(SCIENTIFIC AMERICAN August 1998)