日経サイエンス  1998年8月号

セミの大声の謎

H. C. ベネット=クラーク(オックスフォード大学)

 晩春から晩夏にかけての夕暮れ時は,世界中のいたるところで賑やかで騒々しい時間となる。毎年,数千種類のセミが地中から出てくる。そして,雄は騒々しく,ほとんど,耳を聾(ろう)せんばかりの声で鳴き始める。

 

 せいぜい体長6cmのこの小さな生き物が,なぜ人をいらだたせるほどの音を出せるのだろうか。つい最近まで,謎であった。周期的に大発生するセミがメディアで話題になるほど注目を集めながらも,彼らの生物音響学的な研究はあまりされていなかった。1954年にプリングル(J.W. S. Pringle)がセミの発声に関する論文を発表したが,それ以降,研究が盛んになったとはとても言えない。

 

 この7年間に,オーストラリアのメルボルン大学のヤング(David Young)と私は,このセミの音響学と発声の仕組みを集中的に研究した。私が作り上げた,本当に小さなマイクロホンの探査針を使って,私たちはセミの驚くべき音響システムの特徴を解き明かすことができた。

著者

Henry C. Bennet-Clark

オックスフォード大学無脊椎動物学部のリーダー。たとえば,昆虫はどのように跳ねるかなどといったバイオメカニクス研究と生物音響学的な研究を昆虫でしている。ショウジョウバエの研究から,この小さな生き物が小さな声で歌う“恋の歌”を録音できるような小型マイクを開発した。この7年間は,メルボルン大学動物学部で20年間もセミとの研究をしてきたヤングと,共同研究をしている。

原題名

How Cicadas Make Their Noise(SCIENTIFIC AMERICAN May 1998)

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