日経サイエンス  1998年8月号

“ワールドカップ”ロボットの挑戦

北野宏明(ソニーコンピュータサイエンス研究所) 浅田稔(大阪大学)

 「21世紀中ごろまでに,自律型ヒューマノイドロボットが,ワールドカップのチャンピオンに,国際サッカー連盟(FIFA)の公式ルールで勝利する」――こんな目標を掲げた,国際プロジェクトがスタートした。ロボット・ワールドカップ・イニシアティブ(ロボカップ:RoboCup)である。

 

 ロボカップは,人工知能と知能ロボットの分野での新たな標準問題を提供することによって,それぞれの分野の研究を促進させようという試みである。冒頭でも述べたように,目標達成には半世紀もの長い時間が想定されているが,ロボカップのねらいは,単に「人間と同じようにサッカーができるロボットの開発」というだけはでない。目標の達成までに,さまざまな技術が蓄積され,幅広い分野に新しい技術が普及するものと期待されている。そこには,次世代人工知能,現実の世界で人間と共存して仕事をするロボットの開発なども含まれている(本文より)。

著者

北野宏明(きたの・ひろあき) / 浅田稔(あさだ・みのる)

北野はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー,工学博士。国際基督教大学卒業後,日本電気ソフトウエア生産技術研究所などを経て,カーネギーメロン大学客員研究員。その間,京都大学より博士号を取得。1993年より現職。音声翻訳システムの開発及び,超並列人工知能の提唱により,1993年国際人工知能会議より,The Computers and Thought Award受賞。知能の本質に迫り,知的なシステムの構成パラダイムを確立するために,分子生物学/計算生物学とロボカップのツートップの研究体制を敷いている。浅田は大阪大学教授。1982年に大阪大学で制御工学の博士号を取得。その後,同大学にて助手,助教授を経て現職。この間1986年から1年間米国メリーランド大学にて客員研究員。ロボット視覚の研究を長年実施してきたが,視覚のみの研究では,真に知的なシステム構築が困難と認識し,ロボカップを提唱して,身体による知能発現研究を行い,認知ロボティクスを対象としている。