日経サイエンス  1998年7月号

雌はどのように配偶者を選ぶか

L. A. ドゥガトキン(ルイスビル大学) J.-G. J. ゴーディン(カナダ・マウントアリソン大学)

雌が積極的に配偶相手を選んでいることを示す証拠があるにもかかわらず,なぜ雌がランダムにではなく,雄を識別してつがうのかという疑問はほとんど未解決のままである。雌の選り好みはどのようにして始まり,どのようにして進化してきたのだろうか。個々の雌にとってその利益とコストは何であろうか?

 

 いくつかの場合には,雌が大きな声や鮮やかな色の雄と好んでつがうのは,そのような雄が単に見つけやすいからかもしれない。配偶相手を見つけるためにかかる時間を少なくすれば,雌が捕食者に襲われる危険も少なくなるだろう。

 

 実験から,雄の性質とその性質への雌の好みとが共進化することが示されている。たとえば,こうだ。大きな雄とつがうことを好む雌が生む子どもは,大きな息子か大きな雄に関心をもつ娘になるだろう。ある状況のもとでは,この過程はエスカレートして,雄の極端な形質とそのような形質に対する雌の強い嗜好とを作り出す可能性がある。

 

 さらに,近年の研究では,ほかの雌の行動をまねるといった,社会的な要因もまた配偶者選択に影響を与えることが示されている。(本文より)

著者

Lee Alan Dugatkin / Jean-Guy J. Godin

最初,トリニダードの軍隊に参加し,そこでグッピーの配偶行動に魅了されるようになった。進化生態学者であるドゥガトキンは,1995年からルイスヴィル大学で生物学の助教授をしている。彼は1991年にBinghamtonのニューヨーク州立大学でPh.D.を取得した。彼の研究対象は,協同と利他行動の進化,行動をかたちづくる遺伝的要因と社会的要因の相互作用などである。ゴーディンは行動生態学者で,1981年から所属しているカナダのニューブルンスウィックのマウントアリソン大学の生物学の教授である。彼はブリティッシュコロンビア大学で動物学の博士号を取得し,オックスフォード大学の客員研究員をつとめている。おもな研究分野は,動物の対捕食者行動,採餌行動および配偶者決定についての行動生態学である。    

原題名

How Females Choose Their Mates(SCIENTIFIC AMERICAN April 1998)