日経サイエンス  1998年4月号

持続的管理は熱帯林を救うか

R.E.ライス(国際自然保護協会) R. E. ガリソン(ロンドン大学インペリアル科学技術医科カレッジ) J. W.レイド(国際自然保護協会)

 森林破壊を押しとどめるため,環境保護派の多くの人々が木材の生産量規制について検討を重ねてきた。その検討とは,完全な森林保護と無秩序な森林伐採の間の妥協点を見いだそうとするものである。そもそも森林の管理とは,生産者が森林伐採によって得る経済利潤と環境保護の間の妥協点をさぐることである。こうした観点からみれば,森林の「持続的管理」という言葉は誰もが飛びつきたくなるようなうたい文句ではある。ところが,持続的管理を実際にやるとなれば,伐採に対する法規制をどうするかという問題の検討や伐採後に苗木を植える費用,あるいは伐採後の自然再生を促進するための費用の捻出をどうするかを検討する必要がある。

 

 環境保護派の多くは,こうした持続的管理は,貴重な材木資源を使わざるをえない国々がとるべき現実的なシステムであると考えている。実は著者ら自身もつい最近まではそう思い込んでいた。しかし,環境保護派や森林管理の専門家,そして国際的な支援組織が行ってきた持続的管理に対する努力が成功する見込みは,残念ながらほとんどないことが最近になってわかってきた。(本文より)

著者

Richard E. Rice / Raymond E. Guillison / John W. Reid

熱帯雨林の問題に取り組んでいる3人はそれぞれの専門分野をもっている。ライスはグリンネル大学で経済の学士号と修士号を得た後,1983年にミシガン大学で自然資源学の分野で博士号を取得した。現在,ワシントンD.C.にある国際自然保護協会(コンサーベイション・インターナショナル)の資源経済学のシニア・ディレクターである。ガリソンはブリティッシュ・コロンビア大学で動物学を専攻し,同大学卒業後,1995年にプリンストン大学で生態学と進化生物学の博士号を取得した。現在ロンドンのインペリアル科学技術医科大学で教鞭を執っている。レイドはハーバード大学で社会政策の修士号を得た後,1994年から国際自然保護協会で,主に自然資源の経済と熱帯林保護に関する問題に携わっている。

原題名

Can Sustainable Management Save Tropical Forests?(SCIENTIFIC AMERICAN April 1997)