日経サイエンス  1997年7月号

マーフィーの法則を科学する

R. A. J. マシューズ(アストン大学)

 遅刻しそうなので,靴下の引き出しをあわててひっかき回しているのに,左右そろった靴下が見つからない。 キッチンでは,皿の上に乗せたトーストが滑って,バターを塗った面が床にベチャッと着地してしまう――やっぱり,なのだ。最後の仕上げは駅。切符を買うために窓口に並ぶと,両隣の列はどんどん進む。しかし,自分の前では,誰かさんが海外旅行の手配をしているではないか。

 

 こういった不運は,不運でないことよりも確率的に大きくはない,単なる偶然なのだろうか? それとも,宇宙にはこういったシャクのタネを引き起こす原理のようなものがあるのだろうか? 残念ながら,どうも後者のほうが正しいらしい。そう,宇宙があなたの敵だという証拠があるのだ。

 

 確率論から剛体力学に至る,数学や科学の広い分野の理論を使って,私はマーフィーの法則を吟味してきた。その結果,なんと恐るべきことに,マーフィーの法則群のうち有名なものの多くにちゃんとした裏付けがあることがわかった。(本文より)

著者

Robert A. J. Matthews

英国バーミンガムにあるアストン大学のコンピューター科学科の客員研究員。オックスフォード大学で物理を修めたあと,科学ジャーナリストになり,現在はロンドンのSunday Telegraphの科学欄担当の記者。彼の論文は,数論に関するものから,文学上の謎を解くためのニューラルネットの応用まで幅広い分野をカバーしている。

原題名

The Science of Murphy's Law(SCIENTIFIC AMERICAN April 1997)