日経サイエンス  1997年7月号

人類の祖先は何度アフリカを旅立ったか

I. タッターソル(アメリカ自然史博物館)

 人類の祖先がアフリカで誕生したのは確かである。しかし,そこで何種類の人類が生まれたのだろうか? そして,彼らはいつアフリカを旅立ち,世界各地に広がったのだろうか?

 

 人類の祖先アウストラロピテクス(Australopithecus,猿人)はアフリカで生まれ,ホモ・エレクトス(Homoerectus,原人)になってから,100万年ほど前にアフリカを出て世界中に広がった。その後,各地でホモ・サピエンス(Homosapiens,新人)へと進化したと考えられてきた。

 

 ところが近年,新たな発見が相次ぎ,このストーリーの後半を書き換えるような証拠が集まっている。ホモ・エレクトス誕生以降の時代には,かつて考えられていたよりも,はるかに多くの大事件が起こっていたらしい。

 

 新しい証拠によると,アフリカを出発したのは必ずしもホモ・エレクトスの必要はなく,ホモ・エレクトスから進化した複数の人類集団である可能性もある。しかも,アフリカを出たのは1度ではなく,移住の過程もかつて考えられていたよりも長く複雑だったかもしれない。

 

 著者によれば,古人類学の古典的な解釈では,人類の化石の種はできるだけ少なく,また人類の系統は単一で直線的に進化する,というパターンが好まれてきたそうだ。しかし,新たな化石の発見や年代測定法の進歩は,人類進化の歴史を混乱させるつつある。今後ますますその傾向が強まるかもしれない。(編集部)

著者

Ian Tattersall

タッターソルは英国で生まれ,東アフリカで育った。現在,ニューヨークにあるアメリカ自然史博物館人類学研究部長を務める。最近の著作は,The Fossil Trail: How We Know What We THind WeKnow about Human Evolution(Oxford University Press, 1995)およびThe Rise, Success, and Mysterious Extinction of Our Closest Human Retatives(Macmillan, 1995)。さらに,His Becoming Human: Evolution and Human Uniqueness(G. P. Putnam's Son)を来年出版予定。

原題名

Out of Africa Again... and Again?(SCIENTIFIC AMERICAN April 1997)