日経サイエンス  1997年4月号

スーパーコンピューターで乱流に挑む

P. モーイン(スタンフォード大学) J. キム(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)

 空気や水が速く流れて乱れた挙動を示すとき,これを乱流という。乱流の解析は,古典物理学で悪名高い問題として知られている。基本的には流体に関する運動方程式を解けばいいのだが,この方程式が非線形であり,変数どうしが相互作用するので,計算自体は非常にやっかいである。

 

 しかも,乱流はごくありふれた自然現象なので,流体にかかわる工学設計では,その影響を十分に考慮しなければならない。これまでは模型を使った実験に頼るしかなかったが,最近になって,コンピューターで乱流を精度良く再現する「計算流体力学」が誕生し,航空機や宇宙船,エンジンなどの設計に活用されるようになってきた。

 

 スーパーコンピューターの性能の向上と,計算モデルの改良により,計算流体力学の役割は,一層重要なものになるだろう。目指すのは,乱流の予測と制御である。1秒間に1兆回の浮動小数点演算が可能な“テラフロップス”マシンが数年以内に登場し,複雑な乱流場を本物そっくりに見せてくれるかもしれない。(編集部)

著者

Parviz Moin / John Kim

2人は1980年代初めに米航空宇宙局(NASA)エイムズ研究センターの同僚だった。モーインは現在スタンフォード大学工学部の教授と同大学乱流解析センターの所長を兼任している。彼の最近の研究は乱流制御,衝撃波と乱流の相互干渉,乱流場により起こる騒音に関するものである。キムはカリフォルニア大学ロサンゼルス校工学部の教授である。彼は最近,乱流制御におけるニューラルネットワークの適用に関する研究に取り組んでいる。

原題名

Tackling Turbulence with Supercomputers(SCIENTIFIC AMERICAN January 1997)