日経サイエンス  1997年4月号

パーキンソン病はどこまでわかったか

M. B. H. ユーディム(テクニオン・イスラエル工科大学) P. リーデラー(ビュルツブルク大学)

 パーキンソン病が記載されてから180年もたつが,いまだに根本的な治療法はない。現在,治療に使われているL-ドーパは手や足がふるえるなどといったパーキンソン病の症状を和らげるが,病状の進行を抑えることはできない。

 

 パーキンソン病では,脳幹の黒質という部分の神経細胞が目立って減少する。この細胞はドーパミンという情報伝達物質を分泌して線条体に信号を送る。線条体はさらに大脳皮質の運動を司る部分に信号を伝える。黒質の神経細胞が減少すると,ドーパミンの量が減り,信号が伝わらなくなるのである。

 

 いったい何が黒質の細胞を死に至らしめているのだろうか。フリーラジカルなどいくつかの候補は挙がっているが,最初の引き金となるものはわかっていない。そもそも,すべての患者で同じものが原因になっているかどうかもまだわかっていないのである。

 

 とはいえ,見通しが暗いわけではない。ラジカルが起こす酸化作用から神経細胞を保護する物質や神経細胞の再生を促す物質が見つかりつつある。研究者たちの努力を考えれば,近い将来,パーキンソン病の根治療法が可能になっても何の不思議もない。(編集部)

著者

Moussa B. H. Youdim / Peter Riederer

2人は,1974年から共同研究を行っている。ユーディムは,パーキンソン病と鬱病の治療に使われているモノアミン酸化酵素阻害薬研究のパイオニアで,イスラエルのハイファにあるテクニオン・イスラエル工科大学の教授であると同時に,イブ・トフおよびアメリカナショナルパーキンソン病財団の神経変性疾患に関する研究センターの責任者である。これらはいずれもテクニオンに置かれている。さらに米国立衛生研究所(NIH)のフォガテイ交換研究員で,毎年3カ月はNIHで過ごすことになっている。リーデラーは,ドイツはビュルツブルク大学の臨床神経化学の教授で,臨床神経化学研究室の責任者である。

原題名

Understanding Parkinson's Disease(SCIENTIFIC AMERICAN January 1997)