日経サイエンス  1997年4月号

知られざるエジソン

N.ボールドウイン(全米出版基金)

 今年の2月,米国の最も著名な発明家エジソン(Thomas Alva Edison, 1847-1931)の生誕150年を祝うにあたって,私たちは当然のことながら彼の「3大発明」(電球,蓄音機,映写機)を思い浮かべる。しかし,彼の創造的エネルギーははるかに多産だった。エジソンは,60年以上にわたって,約1000件もの特許を取得した。

 

 初年級の段階で学校から落ちこぼれたエジソンは教育を受けたとは言えないが,自分の知識の足りないところを補うために優れた科学者や技術者を雇うというところに彼の才能を発揮した。彼のあくなき探求心の結果,経験豊かな共同研究者たちが探究すべきアイデアが何百冊という実験ノートに書きつけられた。

 

 一方には,謄写版印刷の先駆である電気ペンというコミュニケーションの手段があった。他方には,エジソンが作った数少ない人形の1つである「おしゃべり人形」があった――彼は真剣に子供たちを喜ばそうとしたのだが,人形の微妙な仕掛けが輸送の際に壊れてしまってうまくいかなかった。エジソンは1890年代を通じて,映画の研究開発に高々4万ドルの資金を投じたにすぎないが,鉄鉱山事業には途方もない資金をそそぎ込んだ。

 

 エジソンは,発明という基礎的な「過程」――彼はアートとか神経労働と呼んだ――に絶え間なくかかわっていたということで記憶さるべきであろう。彼は失敗を認めなかった。彼は多くの試みが結局のところ役に立つかどうかとは関係なく,前進するという必要性に迫られて生きた。

著者

Neil Baldwin

ボールドウィンは,現代アメリカ詩の研究によって,ニューヨーク州立大学バファロー校より1973年にPh.Dを取得した。彼はニューヨーク市にある全米出版基金(全米出版賞のスポンサー)の上級ディレクターである。ボールドウィンは,伝記『エジソン――世紀を発明する』(Hyperion, 1995; paperbound, 1996)の著者であり,今春,PBSゥWNETのシリーズ番組「アメリカの巨匠たち」で放映予定の芸術家マン・レイに関する彼の伝記に基づくドキュメンタリー番組の脚本家兼副プロデューサーでもある。彼は,ニュージャージー州ウェスト・オレンジにあるエジソン・ナショナル・ヒストリック・サイトのタール(Douglas Tarr)とツェロス(George Tselos)の助力に謝意を表している。

原題名

The Lesser Known Edison(SCIENTIFIC AMERICAN February 1997)