日経サイエンス  1996年8月号

ネバダの核廃棄物処分場は安全か

C. G. ホイップル(ICFカイザー社)

 米政府はネバダ州南部にあるユッカマウンテンの地下に,原子力発電や核兵器製造の際に出てくる高レベル放射性廃棄物を処分しようとしている。実現すれば,世界で初めての核廃棄物の永久処分場になる。しかし,この計画は地元のネバダ州当局の激しい反発を呼んでいる。それなのに,政府は原子力発電事業者の廃棄物を1998年から受け入れる契約を結んでいるため,計画の遅れは訴訟ざたになりかねない。

 

 ユッカマウンテンは核実験場に隣接した砂漠地帯にある岩山である。計画では地下水面から300mほど上部のトンネル内に約7万トンの廃棄物を収容する。廃棄物の格納容器が腐食し,地下水に漏れ出した放射性物質が公衆の被曝を招く可能性について,科学者たちは詳しく検討しているが,はっきりしたことはまだわかっていない。そもそも安全を確保すべき期間はどれぐらい必要なのだろうか。1万年とも100万年とも言われており,国の基準はまだ確立していない。

 

 さらに,凝集した廃棄物の自発的核反応や,処分場の水没を懸念する極論もある。こうした将来予測にはつねに不確実性がつきまとうので,安全性に対する議論がぼやけてしまいがちだ。実際,計画はスタートからすでに10年を経過しているにもかかわらず,ほとんど進展していないという。これらのことは,核廃棄物の処分について,米国より計画がはるかに遅れている日本にとって重要な示唆を含んでいる。

著者

Chris G. Whipple

環境エンジニアリング,環境修復およびコンサルタントを主要な業務とするICFカイザー社の副社長。米国科学アカデミー放射性廃棄物評議会議長を務め,現在はニューメキシコ州で計画が進められている核廃棄物処分場に関する環境保護局(EPA)の諮問委員会委員長である。また,放射線防護および計測に関する全米評議会メンバーであり,リスク解析学会の創設者の1人である。

原題名

Can Nuclear Waste Be Stored Safely at Yucca Mountain?(SCIENTIFIC AMERICAN June 1996)