日経サイエンス  1996年8月号

トレンド

国際宇宙ステーションのゆくえ

T. ベアズリー(Scientific American スタッフライター)

 国際宇宙ステーションは270億ドル(約3兆円)もする軌道実験室であり,現在,アラバマ州ハンツビルのボーイング社の工場やモスクワのクルニチェフをはじめ,世界各地の工場でその姿を着々と整えつつある。もちろん日本も参加する。

 

 宇宙ステーションについては,多くの輝かしい見通しが発表されてきた。しかしそれは,科学的な可能性というより,地球上の政治と深い関係をもった“期待”かもしれない。

 

 宇宙ステーションの支持者たちは,莫大な科学的かつ商業的な見返りがあると何年にもわたって主張してきた。しかし,スペースシャトルで10年以上続けられてきた実験から得られた科学的な収穫は,時に興味深いものはあったものの,基本的な識見を生みだすことはなかった。

 

 米国宇宙研究委員会のような科学的な討論会でも,予想される収穫はその施設の全費用に見合ったものではないと警告している。多くの科学者は,この大がかりな計画に反対しているが,その政治的な勢いは止めようがないのが現実らしい。

原題名

Science in the Sky(SCIENTIFIC AMERICAN June 1996)