日経サイエンス  1996年5月号

クリチバ市にみる人間重視の都市計画

J.ラビノビッチ(国際連合) J. レイトマン(世界銀行)

 さまざまな仕事があり,大勢の人が集まる都市の魅力は,交通渋滞や環境汚染によって台なしにされる。当局が状況を改善しようとしても,実のある都市計画を立てることすら難しい。

 

 しかし,ブラジル・パラナ州の州都クリチバ市は,徹底して市民の住みよさを追求する異色の都市計画を積極的に進め,大成功を収めた。バスを主要交通機関としたので,渋滞が存在しない。画期的な緑化やゴミ処理により,良好な自然環境が保たれている。

 

 しかも,こうした成功は,素朴な技術や人々のやる気に訴える対策がもたらしている。“ハイテク依存症”の方にはぜひ一読していただきたい。日本出身の訳者自身が,現地で大活躍しているのも見逃せない。   (編集部)

著者

Jonas Rabinovitch / Josef Leitman

2人はアーバン・プランナーで,ラビノビッチは国際連合に,レイトマンは世界銀行に勤務している。ラビノビッチはリオデジャネイロ連邦大学の建築・都市計画科を卒業後,ロンドン大学で都市交通・交通計画を専攻し,都市開発経済学で修士号を取得。3年前に国連に転出する前はクリチバ市の国際課長兼市長アドバイザーを務め,1981年には都市計画研究所の一員だった。レイトマンは世銀の上級アーバン・プランナーで,1992年カリフォルニア大学バークレー校で,地域計画の博士号を取得。学士号と修士号はハーバード大学で得ている。この論文は著者たちの意見を反映したものであり,クリチバ市,国連開発計画,世銀の意図によるものではない。

原題名

Urban Planning in Curitiba(SCIENTIFIC AMERICAN March 1996)