日経サイエンス  1996年2月号

「すばる」火災事故の関連情報

松尾義之(日経サイエンス編集部)

 

 ハワイ島のマウナ・ケア山頂で建設中の「すばる」で火災事故が起こり,現地の工事関係者に複数の死者が出たというニュースには,本当に驚かされました。亡くなられた方々,および関係者の皆様に,慎んで哀悼の意を表します。

 


 

 さて,私たち編集部の方ですが,ニュースが入ったときはすでに2月号が印刷段階に入っており,内心ビクビクものでした。もし建設が大幅に遅れることになると,海部先生の論文内容が的外れの印象を与えかねないことになります。ニュースが入った当日,さっそく海部先生に連絡を取ろうとしたのですが,事故対策に追われ,コンタクトがとれません。あとで聞いたことですが,海部先生は急遽ハワイに飛んで対策を指示されたようです。
 結論を言いますと,もちろん将来のことを完全に予想することはできませんが,プロジェクトの進行自体に,それほどの変更はないようです。関係者からお聞きしたところでは,燃えたと思われる難燃性の断熱材を取り替える作業に1カ月くらい余分に費やすようですが,大筋においては,今のところそれほど大きな変更はなさそうです。

 


 

 個人的な話を少ししますと,私自身,この「すばる」には特別の思い入れがあります。ハワイに望遠鏡を建設するという話を聞いたのは,15年も前のことで,小平桂一・東京大学教授からでした。確か,一ツ橋会館で会合があって,そのドアの前で先生を張っていた記憶があります。その後,本当に多くの紆余曲折があり,国立天文台が発足し,予算もついて…,さあ,ようやくできるぞ,と思ったわけです。
 そんなとき,高校時代(都立国立高校・昭和45年卒業)の友人が突然連絡をくれました。15年ぶりでしょうか。彼は慶應の経済から三菱商事に行っていて,風の噂では,世界中の辺鄙な奥地に入り込んでいるらしい…。彼の電話では「今度ハワイに天文台を作るんだけど,その担当者になった」というのです。こんな巡り合わせってあるんですね。早速,彼といっしょに三鷹の天文台に小平先生に会いにいきました。そのあと,吉祥寺で一杯。「あまり変わっていないなあ」「おまえもそうだよ」ってな具合…。それからもう4年くらいたったかなあ。
 海外での経験が多い彼は,いま,ハワイでの天文台建設を取り仕切っています。新聞や雑誌に出てくるのは,三菱電機とかコーニングとかいった大会社の名前ばかりですが,それらを支えているキーパースンが,私の国立高校の友人というわけです。いずれ,チャンスがあれば,日経サイエンス本誌で紹介したいと思います。米国内での事故ですから,彼はたぶん,これから起こるであろう「訴訟」に大きな力を割かれるはずです。そうした問題を解決し「すばる」が成功することを祈って,ハワイにいる彼に心からのエールを贈りたいと思います。(1996.1.25)