日経サイエンス  1996年1月号

危機に瀕する漁業資源

C. サフィナ(オーデュポン協会)

 1950年代から60年代にかけて世界の漁業技術は飛躍的に発展した。 レーダーの開発は濃霧での操船を可能にし,ソナーによって魚群を簡単に見つけ出すことができるようになった。また,効率のよい漁 獲機能を備えた“海上の工場”のような漁船も生まれた。その結果, 世界の総漁獲量は1989年に8200万トンに達した。 しかし,世界中で,再生産力を上回るような猛烈なスピードで漁 獲が行われたために,その後,総漁獲量は減少している。高級魚が 獲れなくなったため,漁獲対象は食物連鎖の低位にある魚種にまで拡大され,大型魚や海産哺乳類の餌を奪うことになった。さらに, 混獲のためにイルカやウミガメが命を落したり,稚魚や商品価値の ない種が捨てられるなどの生物被害も広がっている。

著者

Carl SaÞna

1987年に生態学研究でラトガース大学より学位を取得。専門は,海鳥,被食魚および捕食魚間の自然動態の研究。現在,オーデュボン協会海洋生物研究プログラムの指導者。世界サメ類保護専門家団体副議長,海洋水生動物保護ネットワークの創設者の一員,前中部大西洋漁業管理協議員。環境保護協会Pew Charitable Trust's Scholars賞受賞。実益を兼ねたスポーツフィッシングの愛好家。

原題名

The World's Imperiled Fish(SCIENTIFIC AMERICAN Novemberr 1995)